新規IPO企業のストックオプション事例コラム第22回をご覧いただきありがとうございます。
IPO準備企業では、次のような疑問が多くあります。
- ストックオプションにベスティング(段階的な権利確定)を設けるべきか
- ベスティング期間は何年に設定するのが適切か
- 上場までに10年かかった場合、初期のストックオプションはどうなるのか
本コラムでは、新規上場企業(IPO企業)の実例をもとに、ストックオプションの設計・活用実態を解説します。
IPOに成功した企業の事例を知ることで、IPO準備企業のストックオプション設計の参考となれば幸いです。
第22回の事例は、株式会社エブリーです。
この度の上場を心よりお祝い申し上げます。
【免責事項】
本コラムは公開情報に基づき作成しておりますが、一部推計・解釈を含みます。正確性・完全性を保証するものではありません。実務適用にあたっては、個別の事情を踏まえ専門家へご相談ください。
会社概要
新規上場(IPO)に際して提出された有価証券届出書(Ⅰの部)の記載に基づき、概要を整理すると以下のとおりです。
| 社名 | 株式会社エブリー |
|---|---|
| コード | 607A |
| 業種 | サービス業 |
| 市場 | 東京証券取引所グロース市場 |
| 主幹事 | SMBC日興証券 |
| 上場承認日 | 2026年6月30日 |
| 上場日 | 2026年8月4日 |
| 事業内容 | ・レシピ動画メディア「デリッシュキッチン」、ファミリー向け動画メディア「トモニテ」、 ニュース&エンタメ動画メディア「TIMELINE」等の運営 ・小売向け統合ソリューション「retail HUB」(店頭デジタルサイネージ、ネットスーパー システム、小売向けアプリ等)の提供 ・メーカー・小売向けの広告ソリューション提供、リテールDX支援 |
| 会社設立年月日 | 2015年9月1日 |
| 監査法人 | 有限責任 あずさ監査法人 |
| 公開価格 | 230円(仮条件220円〜230円の上限で決定) |
| 初値 | 294円 |
| 時価総額(公開) | 4,770百万円 |
| 時価総額(初値) | 6,097百万円 |
株式会社エブリーは、レシピ動画メディア「デリッシュキッチン」の運営と、小売向け統合ソリューション「retail HUB」を展開する企業です。直近事業年度の売上高は4,250百万円、経常損失は30百万円です。
2015年9月の設立から2026年8月の上場まで、約10年11か月を要しています。
公開価格は230円(仮条件の上限)、初値は294円(騰落率+27.8%)で、初値ベースの時価総額は61億円です。
ストックオプション導入状況
当社は第1回〜第10回の新株予約権を発行しており、全て放棄された第3回を除く9本が残存しています。
最初の発行は2017年3月、直近は2026年3月で、約9年間にわたり発行を続けています。
本稿の数値は、特に断りのない限り提出日の前月末(2026年5月31日)現在です。
潜在株比率(ストックオプション比率)の水準
新株予約権による潜在株式の割合は、希薄化後ベース(既発行株式数+潜在株式数を分母)で8.91%です(1,920,000株÷21,552,808株。希薄化前ベースでは9.78%)。
本シリーズの事例と比べて標準的な水準です。
回号別の内訳は以下のとおりです。
| 回号 | 決議年月日 | 潜在株式数 | 構成比 | 潜在株比率 (希薄化後) | 行使価額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 2017年3月21日 | 41,000株 | 2.1% | 0.19% | 90円 |
| 第2回 | 2017年9月26日 | 32,000株 | 1.7% | 0.15% | 100円 |
| 第4回 | 2018年10月15日 | 82,000株 | 4.3% | 0.38% | 310円 |
| 第5回 | 2019年11月18日 | 224,500株 | 11.7% | 1.04% | 313円 |
| 第6回 | 2021年1月20日 | 188,500株 | 9.8% | 0.87% | 313円 |
| 第7回 | 2021年6月28日 | 140,500株 | 7.3% | 0.65% | 313円 |
| 第8回 | 2022年12月19日 | 383,000株 | 19.9% | 1.78% | 320円 |
| 第9回 | 2025年5月12日 | 617,500株 | 32.2% | 2.87% | 320円 |
| 第10回 | 2026年3月16日 | 211,000株 | 11.0% | 0.98% | 480円 |
| 合計 | ― | 1,920,000株 | 100.0% | 8.91% | ― |
直近3本(第8回〜第10回)で潜在株式全体の63.1%を占め、上場が近づくにつれて発行規模が大きくなっています。
ストックオプションの発行回数、種類、内容
ストックオプションの発行回数、種類
上場申請時点で残存している発行本数は計9本です。
9本とも有償発行の記載がないため、無償ストックオプションと判断しました(執筆者推計)。
付与対象者が取締役・従業員に限られ、行使期間も決議日後2年経過から10年以内に収まるため、税制適格ストックオプション(以下「税制適格SO」)と推定されます。
ストックオプション発行内容
ストックオプションの内容に関する開示資料は以下のとおりです(一部加筆・省略)。
| 回号 | 第1回 | 第2回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 |
|---|---|---|---|---|---|
| ストックオプション種類 (執筆者推計) | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション |
| 決議年月日 (株主総会決議日) | 2017年3月21日 | 2017年9月26日 | 2018年10月15日 | 2019年11月18日 | 2021年1月20日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) [ ]提出日前月末 | 当社取締役 1 当社従業員 6 | 当社取締役 1 当社従業員 8 | 当社取締役 1 当社従業員 25[23] | 当社取締役 1 当社従業員 38[34] | 当社取締役 1 当社従業員 43[38] |
| 新株予約権の数(個) [ ]提出日前月末 | 41 | 32,000 | 84,000 [82,000] | 233,500 [224,500] | 197,000 [188,500] |
| 新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株) [ ]提出日前月末 | 普通株式 41,000 ※新株予約権1個につき1,000株 | 普通株式 32,000 | 普通株式 84,000 [82,000] | 普通株式 233,500 [224,500] | 普通株式 197,000 [188,500] |
| 新株予約権の行使時の払込金額(円) | 90 | 100 | 310 | 313 | 313 |
| 新株予約権の行使期間 | 2019年3月22日〜 2027年3月21日 | 2019年9月27日〜 2027年9月26日 | 2020年10月16日〜 2028年10月15日 | 2021年11月19日〜 2029年11月18日 | 2023年1月21日〜 2031年1月20日 |
| 発行価格/資本組入額(円) | 発行価格 90 資本組入額 45 | 発行価格 100 資本組入額 50 | 発行価格 310 資本組入額 155 | 発行価格 313 資本組入額 157 | 発行価格 313 資本組入額 157 |
| ①継続勤務条件 | 有 | 有 | 有 | 有 | 有 |
| ②上場条件 | 有 (当社の買収に係る承認決議後の一定期間は上場前でも行使可) | 有 (同左) | 有 (同左) | 有 (同左) | 有 (同左) |
| ③相続人行使条件 | 無 (死亡時は当社が無償取得) | 無 (同左) | 無 (同左) | 無 (同左) | 無 (同左) |
| ④業績条件・株価条件 | なし | なし | なし | なし | なし |
| ⑤ベスティング (上場日起点) | 3か月0% →100% | 6か月0% →100% | 6か月0% 6〜18か月50% 18か月100% | 6か月0% 6〜18か月50% 18か月100% | 6か月0% 6〜18か月50% 18か月100% |
| ⑥その他 | なし | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 |
| 回号 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 第10回 |
|---|---|---|---|---|
| ストックオプション種類 (執筆者推計) | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション |
| 決議年月日 (株主総会決議日) | 2021年6月28日 | 2022年12月19日 | 2025年5月12日 | 2026年3月16日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) [ ]提出日前月末 | 当社従業員 24[21] (取締役への付与なし) | 当社取締役 1 当社従業員 67[57] | 当社取締役 1 当社従業員 117[98] | 当社従業員 66 (取締役への付与なし) |
| 新株予約権の数(個) [ ]提出日前月末 | 145,500 [140,500] | 435,000 [383,000] | 675,500 [617,500] | 211,000 |
| 新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株) [ ]提出日前月末 | 普通株式 145,500 [140,500] | 普通株式 435,000 [383,000] | 普通株式 675,500 [617,500] | 普通株式 211,000 |
| 新株予約権の行使時の払込金額(円) | 313 | 320 | 320 | 480 |
| 新株予約権の行使期間 | 2023年6月29日〜 2031年6月28日 | 2024年12月20日〜 2032年12月19日 | 2027年5月13日〜 2035年5月12日 | 2028年3月17日〜 2036年3月16日 |
| 発行価格/資本組入額(円) | 発行価格 313 資本組入額 157 | 発行価格 320 資本組入額 160 | 発行価格 320 資本組入額 160 | 発行価格 480 資本組入額 240 |
| ①継続勤務条件 | 有 | 有 | 有 | 有 |
| ②上場条件 | 有 (当社の買収に係る承認決議後の一定期間は上場前でも行使可) | 有 (同左) | 有 (同左) | 有 (同左) |
| ③相続人行使条件 | 無 (死亡時は当社が無償取得) | 無 (同左) | 無 (同左) | 無 (同左) |
| ④業績条件・株価条件 | なし | なし | なし | なし |
| ⑤ベスティング (上場日起点) | 1年0%/1〜2年40% /2〜3年80%/3年100% | 1年0%/1〜2年40% /2〜3年80%/3年100% | 1年0%/1〜2年30% /2〜3年60%/3年100% | 18か月0%/18〜32か月30% /32〜42か月60%/42か月100% |
| ⑥その他 | なし | 同左 | 同左 | 同左 |
※[ ]内は提出日の前月末(2026年5月31日)現在の数値です(Ⅰの部では[ ]表記)。第10回は提出日の前月末現在の記載のみです。
※第1回のみ新株予約権1個当たりの目的となる株式数が1,000株です(第2回以降は1株)。
権利行使価額について
各回号の権利行使価額と、公開価格230円・初値294円との関係は以下のとおりです。
| 回号 | 権利行使価額 | 潜在株式数 | 公開価格230円・初値294円との関係 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 90円 | 41,000株 | イン・ザ・マネー |
| 第2回 | 100円 | 32,000株 | イン・ザ・マネー |
| 第4回 | 310円 | 82,000株 | アウト・オブ・ザ・マネー |
| 第5回〜第7回 | 313円 | 553,500株 | アウト・オブ・ザ・マネー |
| 第8回・第9回 | 320円 | 1,000,500株 | アウト・オブ・ザ・マネー |
| 第10回 | 480円 | 211,000株 | アウト・オブ・ザ・マネー |
権利行使価額は、90円(2017年3月)から480円(2026年3月)へと約5.3倍に上昇しています。
注目すべきは、残存9本のうち第4回以降の7本(潜在株式1,847,000株、潜在株式全体の96.2%)の権利行使価額が、公開価格230円・初値294円のいずれをも上回っている点です。
非上場段階の株価算定に基づく権利行使価額と上場時の公開価格との間に乖離が生じた形で、本シリーズ第20回のビーエイブルと同様です。
もっとも、行使期間は第10回でも2036年3月まで残っており、上場後の株価次第でインセンティブとして機能します。
権利行使価額の考え方は、ストックオプション入門シリーズ第4回「税制適格SOの行使価額とセーフハーバー|1円SOの条件と株式報酬費用」をご参照ください。
権利行使条件について
継続勤務条件、上場条件、相続人行使条件
全9回号で条件が統一されています。
継続勤務条件は「取得事由」として定められています。役員・使用人・顧問等のいずれの身分も失った場合は当社が無償取得でき、行使は取得事由が生じていないことが条件のため、実質的な在籍条件となります。
上場条件は、上場まで権利行使できないとするものです(M&A時の例外あり。後述)。
相続人による権利行使は認められず、権利者が死亡した場合は当社が無償取得します。
上場条件のM&A例外について
全回号とも、「当社の買収」について株主総会等の承認決議がなされた日以降の一定期間は、上場前でも権利行使できます。
「当社の買収」とは次のいずれかです。
- 当社の発行済株式の議決権総数の50%超を特定の第三者が取得すること
- 合併により、合併直前の当社の総株主が保有することとなる議決権が合併後の会社の50%未満となること
- 株式交換・株式移転により、完全親会社の議決権の50%未満となること
- 事業譲渡又は会社分割により当社の事業の全部又は実質的に全部を第三者に移転させること
業績条件・株価条件について
全9回号とも業績条件・株価条件はなく、行使の要件は「上場(又はM&A)」「在籍」「ベスティング」の3つです。
権利行使条件・取得条項の設計は、ストックオプション入門シリーズ第8回をご参照ください。
付与対象者別付与状況
この章は有価証券届出書の【株主の状況】欄から作成しています。従業員の個別記載は13名分で、残りは「その他126名」にまとめられています。
取締役でない執行役員6名は区分を特定できないため、「従業員」に含まれている可能性があります。
階層別の付与数状況
区分別に整理すると、以下のとおりです。
| 区分 | 人数 | 潜在株式数 | 潜在株式比率 | 1人当たり 潜在株数 | 1人当たり 潜在株式比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 代表取締役社長 | 1 | 0 | 0.00% | 0 | 0.00% |
| 取締役(社長を除く) | 1 | 165,000 | 0.77% | 165,000 | 0.77% |
| 従業員(個別記載) | 13 | 991,000 | 4.60% | 76,231 | 0.35% |
| 従業員(その他126名) | 126 | 764,000 | 3.54% | 6,063 | 0.03% |
| 従業員 計 | 139 | 1,755,000 | 8.14% | 12,626 | 0.06% |
| 合計 | 141 | 1,920,000 | 8.91% | ― | ― |
潜在株式1,920,000株のうち、91.4%にあたる1,755,000株が従業員139名に配分されています。
役員では、取締役執行役員1名が165,000株(0.77%)を保有するのみです。
付与のばらつき状況
従業員の潜在株式の分布は以下のとおりです。
| 従業員 | 人数 | 潜在株式数 | 潜在株式比率 |
|---|---|---|---|
| 最大値 | 1 | 176,000 | 0.82% |
| 中央値(個別記載13名) | 13 | 74,500 | 0.35% |
| 最小値(個別記載13名) | 1 | 34,000 | 0.16% |
| 平均値(その他126名) | 126 | 6,063 | 0.03% |
| 平均値(従業員139名全体) | 139 | 12,626 | 0.06% |
個別記載の13名は176,000株〜34,000株(約5.2倍)です。「その他126名」の1人当たり平均は6,063株で、13名の平均76,231株の約12分の1です。
上位13名(従業員の約9%)が従業員向け潜在株式の56.5%を保有する、ピラミッド型の配分です。
在籍者に対するストックオプション付与割合
在籍者のどの程度の比率に付与されているかを推計しました。
| 区分 | SO保有者数 | 在籍者数 | 付与比率 |
|---|---|---|---|
| 代表取締役社長 | 0 | 1 | 0.0% |
| 取締役(社長を除く) | 1 | 5 | 20.0% |
| 監査役 | 0 | 3 | 0.0% |
| 従業員 | 139 | 174 | 79.9% |
※在籍者数は、取締役6名(うち社外4名)、監査役3名、取締役でない執行役員6名、従業員174名に基づきます(2026年5月31日現在)。
従業員174名のうち139名(79.9%)が新株予約権を保有しており、本シリーズの中でも高い水準です。
取締役では、社内取締役1名のみが保有しています(社外取締役4名は保有なし)。
本シリーズの事例との比較は以下のとおりです。
| 事例 | 発行本数 | 従業員への付与状況 |
|---|---|---|
| 第15回 GO株式会社 | 11本 | 在籍者560名中498名(88.9%) |
| 第16回 LiNKX株式会社 | 6本 | 従業員109名中55名(50.5%) |
| 第20回 ビーエイブル | 4本 | 従業員218名中146名(67.0%) |
| 第21回 アイ・グリッド・ソリューションズ | 3本 | 従業員153名中1名(0.65%) |
| 第22回 エブリー | 9本 | 従業員174名中139名(79.9%) |
エブリーのストックオプションの特徴
当社のストックオプションの特徴は以下の3点です。
① 全回号に「上場後」を起点とする段階的ベスティングを設定し、回号を追うごとに長期化
② 従業員の約8割へ付与
③ 残存9本中7本の権利行使価額が公開価格を上回る「アウト・オブ・ザ・マネー」での上場
① 全回号に「上場後」を起点とする段階的ベスティングを設定し、回号を追うごとに長期化
9本すべてに、上場日を起点とする行使可能割合(ベスティング)が定められています。
一般的なベスティングは付与日を起点としますが、当社は上場日を起点としています。回号ごとの設定は以下のとおりです。
| 回号 | ベスティング(上場日を起点とする行使可能割合) | 100%到達時期 (上場日2026年8月4日基準) |
|---|---|---|
| 第1回 | 3か月まで0%/3か月経過後100% | 2026年11月 |
| 第2回 | 6か月まで0%/6か月経過後100% | 2027年2月 |
| 第4回〜第6回 | 6か月まで0%/6〜18か月50%/18か月経過後100% | 2028年2月 |
| 第7回・第8回 | 1年まで0%/1〜2年40%/2〜3年80%/3年経過後100% | 2029年8月 |
| 第9回 | 1年まで0%/1〜2年30%/2〜3年60%/3年経過後100% | 2029年8月 |
| 第10回 | 18か月まで0%/18〜32か月30%/32〜42か月60%/42か月経過後100% | 2030年2月 |
第1回の3か月から第10回の42か月へと、後発の回号ほど期間が長くなっています。
この設計には次の意味があります。
- 上場まで長く在籍した初期の回号(第1回・第2回)は、上場後まもなく全部行使可能とする
- 上場直前の回号(第9回・第10回)は、上場後の在籍を求めて人材流出を抑える
- 上場直後に行使・売却が集中することを避ける
なお、第10回は行使期間の開始(2028年3月17日)が上場後18か月(2028年2月4日)より後のため、税制適格SOの行使期間要件が実質的な制約となります。
② 従業員の約8割へ付与
当社は従業員174名のうち139名(79.9%)に付与しており、第9回で117名、第10回で66名と、直近も大規模な付与を続けています。
潜在株式の91.4%(1,755,000株)を従業員が保有する、従業員中心の配分です。
設立から上場まで約11年を要し、その間に入社した人材へ継続的に配分してきたことが、9本という発行本数につながっています。
その結果、権利行使価額には第1回の90円から第10回の480円まで約5.3倍の開きがあり、後期入社メンバーへのインセンティブ設計が実務上の論点となります。
③ 残存9本中7本の権利行使価額が公開価格を上回る「アウト・オブ・ザ・マネー」での上場
残存9本のうち第4回以降の7本(潜在株式1,847,000株、潜在株式全体の96.2%)の権利行使価額は310円〜480円であり、公開価格230円・初値294円のいずれをも上回っています。
上場時点でイン・ザ・マネーだったのは第1回(90円)・第2回(100円)の2本(73,000株)のみで、潜在株式全体の3.8%にとどまります。
実務上の留意点は次のとおりです。
- 非上場段階の株価算定と上場時の公開価格には乖離が生じ得るため、上場直前期の株価算定は市場評価との乖離も意識して行う
- 付与対象者には、上場しても直ちに利益が出るとは限らないことを付与時点で説明しておく
本事例では上場日起点のベスティングがあるため、行使できるのは早くても上場後3か月以降、第10回は2028年3月以降です。その時点の株価が、インセンティブとしての実効性を左右します。
IPO準備企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要
ストックオプションは、発行して終わりではなく、設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。
特に、誰に・いつ・何株を付与するかという設計上の判断は、従業員へのインセンティブ設計だけでなく、上場準備における説明・確認事項にも関係します。ストックオプションの発行後に権利行使条件等を変更する場合には、税務・会計・会社法上の影響を慎重に検討する必要があるため、設計段階での専門家への相談を強くおすすめします。
本事例のように上場までに長期間を要し、発行回数が多くなる場合には、回号ごとの権利行使価額・ベスティング・税制適格要件の整合性を通期で管理する必要があります。
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- 「自社の場合、ストックオプションの潜在株比率はどの程度が適切か」
- 「税制適格SOと有償SOのどちらが適しているか」
- 「ベスティングはどの程度の期間に設定すべきか」
など、初回相談で整理可能です。
制度設計に着手する前にご相談いただくことをおすすめします。
次回第23回は、株式会社KOMPEITO(618A)を取り上げる予定です。お楽しみに。
前回の事例は「アイ・グリッド・ソリューションズのストックオプション事例|有償・信託型・税制適格SO併用・上場条件なし【2026年IPO㉑】」をご覧ください。
スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内
IPO準備企業向けに、ストックオプションの種類、税務、株価算定、権利行使条件、発行手続などを体系的に解説しています。
1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら
5 有償ストックオプションとは →こちら
8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項 →こちら
10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)
こちらもご覧ください。




