新規IPO企業のストックオプション活用状況 2026⑮GO【1円SO】【複数SO(行使価額相違)同時発行】

新規IPO企業のストックオプション活用状況コラム第15回をご覧いただきありがとうございます。

ストックオプションの制度設計では、
「ストックオプションプールは何%程度が適切か」
「役員と従業員への配分はどのように設計すべきか」
といったご相談をIPO準備企業から多くいただきます。

本コラムでは、GO株式会社(東証グロース・2026年6月上場)の事例をもとに、ストックオプションプールの規模感・役員と従業員への配分設計・行使条件の実務的な設計方法を具体的に解説します。

IPOに成功した企業の事例を知ることで、IPO準備企業のストックオプション設計の参考となれば幸いです。

【免責事項】
本コラムは公開情報に基づき作成しておりますが、一部推計・解釈を含みます。正確性・完全性を保証するものではありません。実務適用にあたっては、個別の事情を踏まえ専門家へご相談ください。

会社概要

新規上場(IPO)に際して提出された有価証券届出書(Iの部)の記載に基づき、概要を整理すると以下の通りです。

社名GO株式会社
コード581A
業種情報・通信業
市場東京証券取引所グロース市場
主幹事野村証券
承認日2026年5月14日
公開日2026年6月16日
事業内容配車システム提供等モビリティ関連事業
会社設立年月日1977年8月17日
監査法人EY新日本有限責任監査法人
公開価格2,400円
初値2,910円
時価総額(公開)186,431百万円
時価総額(初値)226,048百万円

2026年6月に東証グロース市場へ上場したGO株式会社は、タクシー配車アプリ「GO」を運営するモビリティテック企業として注目を集めました。
本稿では、同社のストックオプション設計をIPO開示資料(有価証券届出書)に基づき分析します。

同社は1977年に設立された日本交通グループのシステム子会社を前身に持ちますが、2020年4月に株式会社ディー・エヌ・エーのタクシーアプリ関連事業を統合し、現在のモビリティテック事業体制を確立。その時点から換算すると、約6年2か月でのIPO実現となります。

公開価格ベースで時価総額約1,864億円と本年最大のIPOとして話題になりました。

この度の上場を心よりお祝い申し上げます。

ストックオプション導入状況

同社は新株予約権を第3回から第14回まで(欠番を除く)発行しており、上場申請時点では計11本が残存しています。

なお、同社は株式分割(合計100倍)を実施しています。表内の数値は分割前の数値を基本とし、〔 〕内に上場申請時点(分割後)の数値を併記しています。

以下、潜在株比率・発行内容・付与対象者ごとに詳しく解説します。

潜在株比率(ストックオプション比率)の水準

株式の総数(発行済株式数+新株予約権による潜在株式数)に対する潜在株式の割合は希薄化後ベース9.97%です。

IPO準備企業では、希薄化後ベースで10%前後に設計される事例が比較的多く見られます。

本事例の9.97%は、一般的なIPO準備企業と比較すると標準的な水準です。しかし、同社のように巨額の資金調達を重ねて上場時時価総額が1,800億円を超える規模になってもなお、約10%のSOプールを維持・配分しきった資本政策の手腕は、レイターステージを見据える経営者やCFOにとって非常に参考になるポイントです。

なお、本稿では「希薄化後ベース(既発行株式数+SO潜在株式数を分母)」で統一しています。
実務では希薄化前ベースで議論される場合もあるため、他社比較時には注意が必要です。

ストックオプションの発行回数、種類、内容

ストックオプションの発行回数、種類

発行本数は第3回から第14回まで(欠番含む)のうち計11本で、上場申請時点でいずれも有効です。
うち8本(第4回・第5回・第6回・第7回・第7回の2・第9回・第11回・第12回)は行使価額や行使条件等から、税制適格ストックオプションとして設計された可能性が高いと推測されます(執筆者推計)。なお、第9回・第11回は行使価額1円のセーフハーバールール適用型税制適格SOです。

ストックオプション発行内容

ストックオプションの内容に関する開示資料は以下の通りです。

読みやすさの観点から、一部加筆・省略を行っています。

回号第3回第4回第5回第6回第7回第7回の2
種類
(執筆者推計)
有償
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
決議年月日2021年
5月27日
2021年
5月27日
2021年
10月27日
2022年
8月25日
2023年
12月24日
2024年
4月25日
付与対象者の
区分及び人数
取締役2名
社外協力者3名
取締役2名
従業員272名
(現187名)
従業員9名
(現7名)
取締役2名
従業員235名
(現182名)
取締役2名
従業員238名
(現196名)
従業員104名
(現87名)
新株予約権の数
(個)
〔上場申請時〕
22,000個
〔2,200,000個〕
19,784個
〔19,348個〕
75個
〔75個〕
4,075個
〔3,815個〕
8,445個
〔7,763個〕
1,600個
〔1,550個〕
潜在株式数
〔上場申請時〕
〔2,200,000株〕〔1,934,800株〕〔7,500株〕〔381,500株〕〔776,300株〕〔155,000株〕
行使価額
〔上場申請時〕
21,715円
〔218円〕
21,715円
〔218円〕
22,747円
〔228円〕
31,351円
〔314円〕
61,698円
〔617円〕
61,698円
〔617円〕
行使期間2021/7/31〜
2031/7/30
2023/5/28〜
2031/5/25
2023/10/29〜
2031/10/8
2024/8/27〜
2032/8/26
2025/12/26〜
2033/12/13
2026/5/17〜
2034/3/1
発行価格
資本組入額
〔上場申請時〕
22,072円
〔221.57円〕
11,036円
〔110.36円〕
21,715円
〔218円〕
10,858円
〔109円〕
22,747円
〔228円〕
11,374円
〔114円〕
31,351円
〔314円〕
15,676円
〔157円〕
61,698円
〔617円〕
30,849円
〔309円〕
61,698円
〔617円〕
30,849円
〔309円〕
行使の条件      
継続勤務条件なし条件付条件付条件付条件付条件付
上場条件条件付条件付条件付条件付ありあり
相続人
行使条件
条件付条件付条件付条件付条件付条件付
株価条件ありなしなしなしなしなし
ベスティングなしなしなしなしあり(3年)あり(3年)
回号第9回第11回第12回第13回第14回
種類
(執筆者推計)
税制適格
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
税制適格
ストックオプション
有償
ストックオプション
有償
ストックオプション
決議年月日2024年
9月26日
2024年
9月26日
2024年
9月26日
2025年
3月23日
2025年
3月23日
付与対象者の
区分及び人数
取締役2名取締役2名
従業員68名
従業員50名取締役2名取締役2名
従業員76名
新株予約権の数
(個)
〔上場申請時〕
6,446個
〔644,600個〕
2,882個
〔2,827個〕
365個
〔335個〕
12,956個
〔1,295,600個〕
8,218個
〔7,953個〕
潜在株式数
〔上場申請時〕
〔644,600株〕〔282,700株〕〔33,500株〕〔1,295,600株〕〔795,300株〕
行使価額
〔上場申請時〕
1円〔1円〕1円〔1円〕69,149円
〔692円〕
74,000円
〔740円〕
74,000円
〔740円〕
行使期間2026/10/2〜
2034/9/27
2026/10/2〜
2034/9/27
2026/10/2〜
2034/9/27
2025/5/21〜
2035/5/18
2025/5/21〜
2035/5/18
発行価格
資本組入額
〔上場申請時〕
発行価格
1円〔1円〕
資本組入額
1円〔1円〕
発行価格
1円〔1円〕
資本組入額
1円〔1円〕
発行価格
69,149円
〔692円〕
資本組入額
34,575円
〔346円〕
発行価格
77,300円
〔773円〕
資本組入額
38,650円
〔386.5円〕
発行価格
77,300円
〔773円〕
資本組入額
38,650円
〔386.5円〕
行使の条件     
継続勤務条件条件付条件付条件付なしなし
上場条件ありありありなしなし
相続人
行使条件
条件付条件付条件付条件付条件付
株価条件なしなしなしなしなし
ベスティングありありあり(3年)なしなし
その他新株予約権割当契約書
に定めるところによる
新株予約権割当契約書
に定めるところによる

第3回・第13回・第14回は有償ストックオプションです。

残りの8本は開示資料上明示されていませんが、行使価額や行使条件等から、税制適格ストックオプションを前提として設計されている可能性が高いと考えられます。
なお、第9回・第11回については行使価額が1円(セーフハーバールール適用、後述)となっています。

権利行使価額について

回号行使価額〔分割調整済価額〕
第3回・第4回21,715円〔218円〕
第5回22,747円〔228円〕
第6回31,351円〔314円〕
第7回・第7回の261,698円〔617円〕
第9回・第11回1円〔1円〕
第12回69,149円〔692円〕
第13回・第14回74,000円〔740円〕

いずれも決議時点(株式分割前)の価額です。〔 〕内は分割後の調整済価額です。

第3回から第6回の権利行使価額については根拠の具体的な記載はありませんが、税制適格ストックオプションの要件(権利行使価額≧契約締結時の株式時価)を満たすために、DCF法等による株価算定結果を参考に設定されたものと推定されます。

第7回以降については有価証券届出書に「DCF法により算定した株式の価値を参考として決定した」旨の記載があります。

一方、第9回・第11回の行使価額1円については、後述のセーフハーバールールを活用したものです。

セーフハーバールールについて詳しく知りたい方は、ストックオプション入門シリーズコラム「税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバールール」をご参照願います。

権利行使条件について

継続勤務条件、上場条件、相続人行使条件

各回号の条件区分は以下のとおりです。

継続勤務条件は有償ストックオプションである第13回・第14回以外は全ての回号で条件付きで付与しています。(取締役会承認がある場合に限り退職者も行使可とする設計)

上場条件については以下の通りです。
・第7回、第7回の2:上場条件あり(無条件)
・第13回、第14回:上場条件なし
・上記以外の回号:上場条件あり(条件付き)

相続人行使条件は全ての回号で条件付き、すなわち取締役会が認める場合以外は不可となっています。

ベスティング(段階的権利確定)について

第7回・第7回の2・第9回・第11回・第12回の5本についてはベスティング期間が設定されています。

このうち第7回・第7回の2・第12回は権利行使基準日から1年経過毎に3分の1が行使可能となる一般的な3年ベスティングです。

これに対し第9回・第11回は上場後2年経過時に40%、以降四半期経過毎に5%行使可能となるベスティング条件と条件が相違しています。

一定の在籍期間を経るごとに段階的に権利が確定する仕組みであり、長期的なインセンティブ効果を狙ったものと考えられます。

株価条件について(第3回のみ)

第3回(有償SO)には、株価条件(権利行使時に一定の株価水準を超えていることを要件とする条件)が付与されています。有償SOにおいて業績・株価連動型のインセンティブ設計を採用したものです。

付与対象者別付与状況

はじめに、この章を読むうえでの注意点をお伝えします。

この章は上場申請書の【株主の状況】欄記載事項から作成しております。

なお、同社の場合、有価証券届出書の【株主の状況】には『その他』として469名の株主が含まれており、個人別の付与内訳を推計することは困難です。
そのため本章では、開示資料から数値が確認できる代表取締役2名分を中心に整理します。

階層別の付与数状況

開示資料から付与内容の判明している対象者について整理すると、以下の通りです。
なお取締役・従業員の切り分けは困難なため、合算して集計しております。

人数潜在株式数潜在株式比率1人当たり
潜在株数
代表取締役24,122,2004.78%2,061,100
取締役・従業員4964,384,6005.08%8,840

代表取締役2名に4.78%(1人当たり2.39%)、取締役・従業員496名に5.08%(1人当たり0.01%)の潜在株式が配分されています。
経営者2名が潜在株式全体の約47.9%を占める一方、496名の取締役・従業員等に約50.9%が分配され、残り約1.2%は社外協力者等への付与分となっています。

付与のばらつき状況

役職別についてばらつきの状況を確認します。

代表取締役では最大付与数と最小付与数には約1.2倍の差があります。

代表取締役人数潜在株式数潜在株式比率
最大値12,256,0002.61%
最小値11,866,2002.16%

取締役・従業員については推計が困難です。

在職者に対する付与割合

「ストックオプションは従業員全員に付与しなければならないのか?」
は、IPO準備企業から非常によくいただくご質問です。

在職者のどの程度の比率に付与されているかを推計しました。
取締役、従業員については分別集計が困難なため、合算して集計させていただいております。

付与人数在籍総数付与比率
代表取締役22100%
取締役・従業員49655888.9%
合計49856088.9%

代表取締役2名全員(100%)と取締役・従業員558名のうち496名(88.9%)にSOが付与されており、合計560名中498名(88.9%)という高い付与率となっています。
同社は在職者のほぼ全員にSOを付与する設計といえます。

同社のストックオプションの特徴

同社のストックオプションの特徴は以下の3点です。

① 役員・従業員の大半(89%)、500名弱へのSO付与

② セーフハーバールールによる行使価額1円SOの活用(第9回・第11回)

③ 従業員付与SOの条件細分化(行使価額、行使条件等)

① 役員・従業員の大半(89%)へのSO付与

代表取締役2名・取締役・従業員を含む合計560名のうち498名(88.9%)にSOが付与されています。

スタートアップでは一部の役職者やハイパフォーマーに限定して付与するケースも多い中、GO株式会社は在職者の約89%に付与しており、比較的広範な従業員参加型の制度設計を採用していると考えられます。

特に、第4回(2021年5月)では取締役2名と従業員272名に対して一括付与しており、大規模な付与を初期から実施しています。その後も第6回(従業員235名)、第7回(従業員238名)、第7回の2(従業員104名)と、定期的に在職従業員へのSO付与を継続していることが確認できます。

② セーフハーバールールによる行使価額1円SOの活用

2023年度税制改正(2024年4月1日以後に付与されるSOから適用)により、一定の要件を満たすスタートアップ等が発行する税制適格ストックオプションについて、「セーフハーバールール」と呼ばれる特例が設けられました。

同社は第9回(2024年9月26日決議、取締役2名向け)および第11回(同日決議、取締役2名・従業員68名向け)において、行使価額1円の税制適格SOを発行しており、セーフハーバールールを活用した設計と考えられます。

③ 従業員付与SOの条件細分化(行使価額、行使条件等)

2024年9月26日に、以下の3本を同時に発行しています。

回号付与対象者行使価額(上場申請時)
第9回(税制適格)取締役2名1円(セーフハーバー)
第11回(税制適格)取締役2名・従業員68名1円(セーフハーバー)
第12回(税制適格)従業員50名692円(公正価値ベース)

注目すべき点は、従業員向け税制適格SOの行使価額を「1円(セーフハーバー適用)」と「692円(公正価値ベース)」の二種類に分けて同時発行していることです。

第11回(1円SO)は取締役2名と従業員68名、第12回(692円SO)は別の従業員50名が対象となっています。

従業員の大半にSOを付与する一方で、一律平等ではなく貢献度・役割に応じた条件差を設けています。
これは、2024年の税制改正に準拠した「税制適格SOの年間権利行使限度額(拡充枠)」を最大限に活かしつつ、既存メンバーと新規コア人材へのインセンティブの強弱、あるいはベスティングによるリテンション(引き止め)効果を精緻にコントロールするための、極めて戦略的な設計であると推定されます。

またベスティングについても第9回・第11回と第12回で設定内容が相違しており、権利行使条件にも差異が生じています。

このように、同一日に複数の行使価額・権利行使条件でSOを分けて発行するという高度な設計は、2023年度税制改正後の新たな実務対応として参考になります。

非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要

ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。

特に、誰に・いつ・何株を付与するかという設計上の判断は、その後の従業員モチベーションやIPO審査に直接影響します。
制度発行後の変更は容易ではないため、設計段階での専門家への相談を強くおすすめします。

Gemstone石割公認会計士事務所が選ばれる理由

・非上場株式株価算定、スタートアップ向けストックオプション評価・設計支援の専門事務所

・累計1000件超、年間100件超の株価算定、ストックオプション評価実績

・2014年以降累計30件超の新規IPOに関与

・豊富な監査法人監査・上場審査対応経験

Gemstone石割公認会計士事務所では、
ストックオプション発行のための株価算定サービス
税制適格ストックオプション設計支援サービス
有償ストックオプション評価・設計支援サービス

を実施しています。

≫ストックオプション発行目的株価算定サービス
≫税制適格ストックオプション設計・評価サービス
≫有償ストックオプション設計・評価サービス

30分無料相談を実施しております

ご相談内容に応じて、次のような点を整理します。

  • 「自社の場合、潜在株比率は何%が適切か」
  • 「税制適格SOと有償SOのどちらが適切か」
  • 「退職者にも権利行使可能とするべきか」

    など、初回相談で整理可能です。

制度設計に着手する前にご相談いただくことをおすすめします。

次回第16回は、LiNKXを取り上げる予定です。お楽しみに。

スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内

IPO準備企業向けにストックオプションの制度・税務・実務を体系的に解説しています。

1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら

2 ストックオプションの種類と税金の違い →こちら

3 税制適格ストックオプションの9要件 →こちら

4 税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバー →こちら

5 有償ストックオプションとは →こちら

6 税制非適格ストックオプションとは→こちら

7 ストックオプション発行会社の会計・税務→こちら

8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項→こちら

9 ストックオプション発行の実務プロセス(リリース予定)

10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)

こちらもご覧ください。

この記事を書いた人

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

非上場株式株価算定、ストックオプション評価・設計支援を専門とする公認会計士・社会保険労務士
公認会計士(日本公認会計士協会東京会 正会員)
社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)

大学卒業後メガバンク勤務を経て、Gemstoneグループに入社。
株価算定およびストックオプション評価業務を中心に担当し、2025年には年間139件の算定・評価業務を担当。

著書(共著)
『スタートアップのための資本政策入門』(中央経済社)