新規IPO企業のストックオプション活用状況コラムをご覧いただきありがとうございます。
「ストックオプションプールは何%くらいが標準ですか?」
「役員と従業員の比率はどの程度が適当でしょうか?」
ストックオプション評価・株価算定を多数支援する中で、特に多く寄せられるご質問です。
ストックオプション導入を決めた後も制度設計で悩まれる経営者・CFOは少なくありません。
ストックオプションは報酬制度の一環として設計すべきものであり、正解は企業ごとに異なります。
その一方で、他社の事例を参考にしたいというニーズが多いのも実情です。
本コラムでは、IPO企業のストックオプション設計事例を具体的に分析します。
潜在株比率、付与対象者、行使価額の推移などを公開資料から整理し、IPO準備企業の制度設計の参考となる実務ポイントを解説します。
IPOに成功した企業の実例を参照することで、自社の制度設計に活かしていただければ幸いです。
本コラムで分かること
・IPO企業におけるストックオプション比率の実例
・役員・従業員への付与状況の実態
・ストックオプション設計上の実務的な示唆
【ご注意願います】
本コラム上の数値は全て公開されている新規上場申請のために開示された有価証券報告書の数値を使用しております。
ただし、一部については開示資料に基づく推定を含んでおり、前提条件により結果が異なる可能性があります。
2026年第8回目の事例は、株式会社システムエグゼです。
この度のご上場を心よりお祝い申し上げます。
会社概要
上場申請書上の概要は以下の通りです。
| 社名 | 株式会社システムエグゼ |
| コード | 548A |
| 業種 | 情報・通信業 |
| 市場 | 東京証券取引所スタンダード市場 |
| 主幹事 | みずほ証券 |
| 承認日 | 2026年3月3日 |
| 公開日 | 2026年4月6日 |
| 事業内容 | システムインテグレーションおよび自社開発ソフトウェアプロダクトの提供 |
| 会社設立年月日 | 1998年2月4日 |
| 監査法人 | 太陽有限責任監査法人 |
| 初値 | 1,061円 |
| 公開価格 | 950円 |
| 時価総額(公開) | 4,972 百万円 |
| 時価総額(初値) | 5,553 百万円 |
1998年2月の設立から、約28年の歳月を経てIPOに至っています。
2021年3月期から安定した業績を計上しており、東証スタンダード市場への上場を実現しています。
既に配当を実施している点が特徴です。
ストックオプション導入状況
ストックオプションは導入されていません。
本シリーズで取り上げた2026年IPO企業(計8社)の中で、初めてのストックオプション(SO)未導入事例となっています。
潜在株比率(ストックオプション比率)の水準
新株予約権の発行がないため、潜在株比率(希薄化後ベース)は0%です。
ストックオプションの発行回数、種類、内容
ストックオプションを発行しておりませんので、記載する事項はありません。
当社の株式報酬設計の特徴|従業員持株会の活用
ストックオプション以外の観点から、当社の株式報酬の特徴を整理します。
当社株式報酬の特徴は以下の通りです。
ストックオプションの代わりに従業員持株会を活用している。
配当実施による持株会への間接的な補助。
従業員持株会とは
ストックオプション制度の利用がない代わりに当社では従業員持株会を利用しています。
従業員持株会は、従業員が給与天引きなどで自社株を定期的に購入する仕組みであり、一般的には会社側が「奨励金(拠出金に対する数%〜数十%の補助)」を出すことで、福利厚生の一環として機能します。
従業員持株会とストックオプションの比較
ストックオプションと従業員持株会は何が違うのでしょうか。
ストックオプションと従業員持株会の制度上の違いをまとめてみました。
| 従業員持株会 | ストックオプション | |
|---|---|---|
| 主な原資 | 従業員の給与(自己資金) | 会社からの無償付与(行使時に行使価額の払込が必要) |
| 主な目的 | 福利厚生・財産形成・安定株主形成 | 業績向上へのインセンティブ・リテンション |
| 対象者 | 原則として全従業員 | 役員や特定のキーマンに限定されることが多い |
| 議決権 | 持株会理事長などが一括して行使 | 各保有者が直接行使 |
ストックオプションが会社からの報酬として役員や特定の従業員に付与されるのに対し、従業員持株会は従業員自身の資金で株式を購入する仕組みであり、会社が奨励金などで補助する福利厚生としての性格が強い制度です。
短期間に急成長する会社はストックオプションを、中長期にわたり安定的に成長する会社は従業員持株会を重視する傾向が見られます。
当社の従業員持株会利用状況
それでは持株会はどの程度活用されているでしょうか。
上場申請書「株式の状況」記載から推定します。
| 人数 | 持株数 | 持株比率 | |
|---|---|---|---|
| 代表取締役 | 1 | 323,000 | 6.68% |
| 取締役 | 4 | 619,000 | 12.81% |
| 従業員 | 34 | 623,560 | 12.90% |
| 元従業員 | 19 | 338,100 | 7.00% |
| システムエグゼ社員持株会 | 1 | 64,940 | 1.34% |
| その他 | 53 | 16,300 | 0.34% |
| 合計 | 112 | 1,984,900 | 41.07% |
その他53名も従業員もしくは元従業員という推定で集計しました。
持株会自体の比率は1.34%に留まりますが、『従業員』や『取締役』名義での保有分を合わせると、IPO前に持株会から引出し(個人名義化)が行われた可能性が高いと推察されます。
取締役、従業員、元従業員、持株会で41%を保有しており、IPOによりストックオプション無しでも多くの従業員がメリットを享受できたと考えられます。
配当による持株会への間接的な補助
当社は上場申請書記載の最も古い決算期である2021年3月期から継続的に配当を実施しており、配当性向は7.8%~21.6%の水準です。
通常、持株会が受け取った配当金は株式の追加取得に充てられ、加入従業員全員が持株数に応じて恩恵を受けます。
つまり、継続的な配当を通じて、持株会に参加する従業員に対し、実質的な資産形成のサポートを行っていたと言えます。
上記の通り、ストックオプション制度以外でも従業員にIPOメリットを共有できるという実務上の示唆に富む事例といえます。
次回第9回はヒトヒトホールディングス【549A】の予定です。
非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要
ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。
特に報酬制度としてのストックオプションの位置付けは制度の効果を大きく左右する重要な判断となります。
経験豊富な専門家への早期相談をおすすめします。
Gemstone石割公認会計士事務所が選ばれる理由
・非上場株式株価算定、スタートアップ向けストックオプション評価・設計支援の専門事務所
・累計1000件超、年間100件超の株価算定、ストックオプション評価実績
・2014年以降累計30件超の新規IPOに関与
・豊富な監査法人監査・上場審査対応経験
Gemstone石割公認会計士事務所では、
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≫有償ストックオプション設計・評価サービス
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ご相談内容に応じて、次のような点を整理します。
- 貴社の状況で、税制適格ストックオプションが利用可能かの整理
- 税制適格SOが使えない場合の、有償SO・税制非適格SOの選択肢比較
- 有償ストックオプションの評価額(公正価値)の考え方と実務上の留意点
- 権利行使価額設定のための株価算定
- 現時点で取るべき次の実務ステップの整理
制度設計に着手する前のご相談をおすすめします。
スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内
IPO準備企業向けにストックオプションの制度・税務・実務を体系的に解説しています。
こちらもご覧ください。
1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら
2 ストックオプションの種類と税金の違い →こちら
3 税制適格ストックオプションの9要件 →こちら
4 税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバー →こちら
5 有償ストックオプションとは →こちら
6 税制非適格ストックオプション →こちら
7 ストックオプション発行会社の会計・税務→こちら
8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項(リリース予定)
9 ストックオプション発行の実務プロセス(リリース予定)
10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)

