新規IPO企業のストックオプション活用状況コラム第12回をご覧いただきありがとうございます。
ストックオプションの制度設計では、
「ストックオプションプールは何%程度が適切か」
「役員と従業員への配分はどのように設計すべきか」
といったご相談をIPO準備企業から多くいただきます。
本コラムでは、新規上場企業(IPO企業)の実例をもとに、ストックオプションの設計・活用実態を解説します。
IPOに成功した企業の事例を知ることで、IPO準備企業のストックオプション設計の参考となれば幸いです。
【免責事項】
本コラムは公開情報に基づき作成しておりますが、一部推計・解釈を含みます。正確性・完全性を保証するものではありません。実務適用にあたっては、個別の事情を踏まえ専門家へご相談ください。
2026年第12回の事例は、株式会社SQUEEZEです。
この度の上場を心よりお祝い申し上げます。
会社概要
新規上場(IPO)に際して提出された有価証券届出書(Iの部)の記載に基づき、概要を整理すると以下の通りです。
| 社名 | 株式会社SQUEEZE |
| コード | 558A |
| 業種 | サービス業 |
| 市場 | 東京証券取引所グロース市場 |
| 主幹事 | SBI証券 |
| 承認日 | 2026年3月24日 |
| 公開日 | 2026年4月22日 |
| 事業内容 | 自社ホテル運営、システム開発・提供、宿泊施設の企画・開発、DX全般のコンサルティング等 |
| 会社設立年月日 | 2014年9月1日 |
| 監査法人 | ESネクスト有限責任監査法人 |
| 公開価格 | 3,110円 |
| 初値 | 3,250円 |
| 時価総額(公開) | 9,628百万円 |
| 時価総額(初値) | 10,061百万円 |
2014年9月設立から約11年7か月での上場となっています。
ストックオプション導入状況
当社は新株予約権を第1回から第9回まで全9本発行しており、うち第1回・第2回は消却済みのため、上場申請時点では7本が残存しています。
以下、潜在株比率・発行内容・付与対象者ごとに詳しく解説します。
潜在株比率(ストックオプション比率)の水準
株式の総数に対する新株予約権による潜在株式の割合は希薄化後ベース12.95%です。
IPO準備企業では、希薄化後ベースで10%前後に設計される事例が比較的多く見られます。
本事例の12.95%は、一般的なIPO準備企業と比較するとやや高めの水準です。
なお、本稿では「希薄化後ベース(既発行株式数+SO潜在株式数を分母)」で統一しています。
実務では希薄化前ベースで議論される場合もあるため、他社比較時には注意が必要です。
ストックオプションの発行回数、種類、内容
ストックオプションの発行回数、種類
発行本数は全9本ですが、第1・2回は消却済みのため、上場申請時点では7本が残存しています。
ストックオプション発行内容
ストックオプションの内容に関する開示資料は以下の通りです。
読みやすさの観点から、一部加筆・省略を行っています。
| 回号 | 第3回新株予約権 | 第4回新株予約権 | 第5回新株予約権 | 第6回新株予約権 |
|---|---|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 有償ストックオプション | 税制適格ストックオプション |
| 決議年月日 | 2018年3月22日 | 2021年3月25日 | 2022年12月22日 | 2023年2月28日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 取締役 1名 従業員 1名 | 取締役 2名 従業員 1名 | 取締役 1名 子会社取締役 1名 監査役 2名 外部協力者 3名 | 取締役 2名 従業員 14名 |
| 新株予約権の数(個)〔 〕上場申請時 | 230個 〔23,000個〕 | 425個 〔42,500個〕 | 1,145個 〔114,500個〕 | 830個 〔83,000個〕 |
| 新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株)〔 〕上場申請時 | 普通株式230株 〔23,000株〕 | 普通株式425株 〔42,500株〕 | 普通株式1,145株 〔114,500株〕 | 普通株式830株 〔83,000株〕 |
| 新株予約権の行使時の払込金額(円)〔 〕上場申請時 | 35,000円 〔350円〕 | 73,000円 〔730円〕 | 73,000円 〔730円〕 | 73,000円 〔730円〕 |
| 新株予約権の行使期間〔 〕上場申請時 | 2020年3月23日〜2028年3月22日 | 2023年3月26日〜2031年3月25日 | 2023年1月1日〜2032年12月31日 | 2025年3月1日〜2033年2月28日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円)〔 〕上場申請時 | 発行価格 35,000円〔350円〕 資本組入額 17,500円〔175円〕 | 発行価格 73,000円〔730円〕 資本組入額 36,500円〔365円〕 | 発行価格 73,173円〔731.73円〕 資本組入額 36,587円〔365.865円〕 | 発行価格 73,000円〔730円〕 資本組入額 36,500円〔365円〕 |
| 新株予約権の行使の条件 | ||||
| ①継続勤務条件 | あり | あり | あり | あり |
| ②上場条件 | 記載なし | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| ③相続人行使条件 | 記載なし | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| ④その他 | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる |
| ⑤業績条件 | なし | なし | あり 2022/12期から2026/12期まで 売上高40億円超:100%行使可能 売上高20億円超:50%行使可能 | なし |
| 回号 | 第7回新株予約権 | 第8回新株予約権 | 第9回新株予約権 |
|---|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 有償ストックオプション | 税制適格ストックオプション | 税制適格ストックオプション |
| 決議年月日 | 2024年11月7日 | 2024年11月7日 | 2025年1月10日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 取締役 1名 子会社取締役 1名 監査役 2名 従業員 1名 | 取締役 2名 従業員 7名 | 従業員 7名 |
| 新株予約権の数(個)〔 〕上場申請時 | 80個 〔8,000個〕 | 1,500個 〔150,000個〕 | 320個 〔32,000個〕 |
| 新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株)〔 〕上場申請時 | 普通株式80株 〔8,000株〕 | 普通株式1,500株 〔150,000株〕 | 普通株式320株 〔32,000株〕 |
| 新株予約権の行使時の払込金額(円)〔 〕上場申請時 | 104,699円 〔1,047円〕 | 104,699円 〔1,047円〕 | 104,699円 〔1,047円〕 |
| 新株予約権の行使期間〔 〕上場申請時 | 2024年11月8日〜2034年11月7日 | 2026年11月7日〜2034年11月6日 | 2027年1月10日〜2035年1月9日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円)〔 〕上場申請時 | 発行価格 106,600円〔1,066.01円〕 資本組入額 53,300円〔533.005円〕 | 発行価格 104,699円〔1,047円〕 資本組入額 52,349円〔524円〕 | 発行価格 104,699円〔1,047円〕 資本組入額 52,349円〔524円〕 |
| 新株予約権の行使の条件 | |||
| ①継続勤務条件 | あり | あり | あり |
| ②上場条件 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| ③相続人行使条件 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| ④その他 | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる | 「新株予約権引受契約」に定めるところによる |
| ⑤業績条件 | あり 2024/12期から2027/12期まで 売上高60億円超:100%行使可能 売上高30億円超:50%行使可能 | なし | なし |
第5回・第7回は有償ストックオプションです。
残りの第3回・第4回・第6回・第8回・第9回は開示資料上明示されていませんが、行使価額や行使条件等から、税制適格ストックオプションを前提として設計されている可能性が高いと考えられます。
権利行使価額について
第3回:35,000円(株式分割後350円)
第4回~第6回:73,000円(株式分割後730円)
第7回~第9回:104,699円(株式分割後1,047円)
いずれも決議時点(株式分割前)の価額です。
第7回~第9回権利行使価額はDCF法による算定株価を参考に設定されています。
第3回~第6回の権利行使価額については根拠の記載はありませんが、税制適格要件を満たすために、同様に算定株価を基準として設定されたものと推定されます。
税制適格ストックオプションでは、権利行使価額が契約締結時の株式時価以上であることが要件とされています。
非上場企業では、DCF法・類似会社比較法・純資産法等による株価算定を実施し、その結果を参考に権利行使価額を設定するケースが一般的です。
権利行使条件について
継続勤務条件、上場条件、相続人行使条件
全回号で統一された条件となっています。
継続勤務条件:あり
上場条件:記載なし
相続人行使条件:記載なし
上場条件・相続人行使条件については記載がありません。
その代わりに以下のように、新株予約権引受契約による定めに従うという規定が付与されています。
上場条件・相続人行使条件についても何らかの規定が新株予約権引受契約において定められていると想定されます。
本新株予約権の行使についてのその他の条件は、当社と本新株予約権の割当てを受ける者との間で締結する「新株予約権引受契約」に定めるところによる。
その他の条件
第5回、第7回の有償ストックオプションには業績条件が付与されています。
具体的にはそれぞれ4期、5期の間に一定の売上高を達成すると権利行使が可能となる条件です。
業績条件を設けることで、インセンティブを会社の成長と連動させる設計となっています。付与対象者にとっては、一定の業績水準に到達することが権利行使の前提となるため、より強い動機づけ効果が期待されます。
業績条件が付される場合、条件未達リスクがオプション価値へ反映されるため、理論価値が低下する要因となります。
付与対象者別付与状況
階層別の付与数状況
開示資料から付与内容の判明している対象者について整理すると、以下の通りです。
| 人数 | 潜在株式数 | 潜在株式比率 | 1人当たり潜在株数 | 1人当たり潜在株式比率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 代表取締役 | 1 | 160,500 | 4.59% | 160,500 | 4.59% |
| 取締役 | 3 | 78,000 | 2.23% | 26,000 | 0.74% |
| 監査役 | 3 | 12,000 | 0.34% | 4,000 | 0.11% |
| 従業員 | 20 | 183,500 | 5.24% | 9,175 | 0.26% |
代表取締役4.59%、取締役平均0.74%、監査役平均0.11%、従業員平均0.26%となっており、経営陣に厚く配分しつつ、従業員にも広くインセンティブを付与するスタートアップ型の配分設計といえます。
付与のばらつき状況
役職別についてばらつき状況を確認してみます。
取締役では最大付与数と最小付与数には約23倍の差があります。
| 取締役 | 人数 | 潜在株式数 | 潜在株式比率 |
|---|---|---|---|
| 最大値 | 1 | 46,000 | 1.31% |
| 中央値 | 30,000 | 0.86% | |
| 最小値 | 1 | 2,000 | 0.06% |
監査役では最大付与数と最小付与数には約3倍の差があります。
| 監査役 | 人数 | 潜在株式数 | 潜在株式比率 |
|---|---|---|---|
| 最大値 | 1 | 6,000 | 0.17% |
| 中央値 | 4,000 | 0.11% | |
| 最小値 | 1 | 2,000 | 0.06% |
従業員では最大付与数と最小付与数には約31倍の差があります。
| 従業員 | 人数 | 潜在株式数 | 潜在株式比率 |
|---|---|---|---|
| 最大値 | 1 | 47,000 | 1.34% |
| 中央値 | 2,750 | 0.08% | |
| 最小値 | 7 | 1,500 | 0.04% |
役割・期待貢献度に応じて、メリハリのある付与設計が採用されていることが分かります。
在職者に対する付与割合
「ストックオプションは従業員全員に付与しなければならないのか?」
は、IPO準備企業から非常によくいただくご質問です。
在職者のどの程度の比率に付与されているかを推計しました。
| 人数 | 総数 | 比率 | |
|---|---|---|---|
| 代表取締役 | 1 | 1 | 100.00% |
| 取締役 | 3 | 3 | 100.00% |
| 監査役 | 3 | 3 | 100.00% |
| 従業員 | 20 | 79 | 25.32% |
※なお、第5回では外部協力者3名にも付与されていますが、上記集計は役員・従業員(在職者)を対象としています。
代表取締役・取締役・監査役には全員(100%)に付与されています。
当社のストックオプションの特徴
当社のストックオプションの特徴は以下の通りです。
新株予約権引受契約による行使条件設定
有償ストックオプションの活用
新株予約権引受契約による行使条件設定
ストックオプション(新株予約権)の発行時に、新株予約権引受契約を締結し、行使条件等を定める実務は、スタートアップやIPO準備会社を中心に広く採用されています。
発行要項のみでは定めにくい細かな条件を整理できる点が大きな特徴です。
【主なメリット】
・付与対象者ごとに柔軟な条件設定が可能
・要項よりも詳細に各種取扱いを定められる
・競業避止義務や秘密保持義務と連動できる
一方で、以下の点には注意が必要です。
【主なデメリット・注意事項】
・付与対象者ごとに条件を変えることで管理負担が増大する
・発行要項と契約内容が矛盾すると、条項の有効性が争点となる可能性がある
・会社裁量による恣意的な失効条項は、IPO審査において合理性や運用実態の確認対象となるリスク
・税制適格ストックオプションでは、複雑な条件設計により適格性へ影響するリスク
実務上は、行使条件・取得事由・譲渡制限等の重要事項は発行要項にも記載したうえで、引受契約において詳細運用を補完する構成が一般的です。
特に継続勤務条件、上場条件、相続人行使条件は要項に記載し、ベスティング・クリフ等は引受契約に記載するのが実務上比較的多く採用される設計パターンです。
以上のように、当社は上場条件・相続人行使条件についても要項には記載せず、新株予約権引受契約に委ねる設計となっている点が特徴的です。
有償SOへの業績条件設定(経営目標との連動)
第5回・第7回の有償ストックオプションに業績条件が設けられているのは、インセンティブ効果を会社の成長角度と強く連動させる狙いがあると想定されます。
こうした設計は、付与対象者のモチベーションを高めるだけでなく、条件未達リスクがオプション価値へ反映されるため、発行会社にとっては有償SOの払い込み価格(理論価値)を抑えられるという実務上のメリットも生み出します。
以上の通り、SQUEEZEのストックオプション付与は、役割や期待貢献度に応じたメリハリのある配分を行いつつ、
・新株予約権引受契約による行使条件設定
・有償ストックオプションでの業績条件設定
という特徴を有しています。
非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要
ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。
特に、誰に・いつ・何株を付与するかという設計上の判断は、その後の従業員モチベーションやIPO審査に直接影響します。
制度発行後の変更は容易ではないため、設計段階での専門家への相談を強くおすすめします。
Gemstone石割公認会計士事務所が選ばれる理由
・非上場株式株価算定、スタートアップ向けストックオプション評価・設計支援の専門事務所
・累計1000件超、年間100件超の株価算定、ストックオプション評価実績
・2014年以降累計30件超の新規IPOに関与
・豊富な監査法人監査・上場審査対応経験
Gemstone石割公認会計士事務所では、
ストックオプション発行のための株価算定サービス
税制適格ストックオプション設計支援サービス
有償ストックオプション評価・設計支援サービス
を実施しています。
≫ストックオプション発行目的株価算定サービス
≫税制適格ストックオプション設計・評価サービス
≫有償ストックオプション設計・評価サービス
30分無料相談を実施しております
ご相談内容に応じて、次のような点を整理します。
- 「自社の場合、潜在株比率は何%が適切か」
- 「税制適格SOと有償SOのどちらが適切か」
- 「退職者にも権利行使可能とするべきか」
など、初回相談で整理可能です。
制度設計に着手する前にご相談いただくことをおすすめします。
次回第13回は、犬猫生活の事例を取り上げる予定です。お楽しみに。
スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内
IPO準備企業向けにストックオプションの制度・税務・実務を体系的に解説しています。
1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら
2 ストックオプションの種類と税金の違い →こちら
3 税制適格ストックオプションの9要件 →こちら
4 税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバー →こちら
5 有償ストックオプションとは →こちら
6 税制非適格ストックオプションとは→こちら
7 ストックオプション発行会社の会計・税務→こちら
8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項(リリース予定)
9 ストックオプション発行の実務プロセス(リリース予定)
10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)
こちらもご覧ください。

