新規IPO企業のストックオプション活用状況 2026⑪バトンズ【親子上場】【潜在株比率15%超】【信託型SO消却】

新規IPO企業のストックオプション活用状況コラム第11回をご覧頂きありがとうございます。

ストックオプションの制度設計においては、
「プールは何%が適切か」「役員と従業員の配分はどうするか」
といったご相談を多くいただきます。

本コラムでは、新規上場企業の実例をもとに、
ストックオプションの設計・活用実態を解説します。

IPOに成功した企業の事例を知ることで、IPO準備企業のストックオプション設計の参考となれば幸いです。

【免責事項】
本コラムは公開情報に基づき作成しておりますが、一部推計・解釈を含みます。正確性・完全性を保証するものではなく、実務適用にあたっては個別に専門家へご相談ください。

2026年第11回目の事例は、株式会社バトンズです。

この度の上場を心よりお祝い申し上げます。

会社概要

上場申請書上の概要は以下の通りです。

社名株式会社バトンズ
コード554A
業種情報・通信業
市場東京証券取引所グロース市場
主幹事大和証券      
承認日2026年3月17日
公開日2026年4月21日
事業内容M&A総合プラットフォーム「BATONZ」の企画・開発・運用
会社設立年月日2018年4月5日
監査法人有限責任監査法人トーマツ
公開価格660円
初値1,674円
時価総額(公開)3,051 百万円
時価総額(初値)7,738 百万円

2018年4月に株式会社日本M&Aセンター(現 株式会社日本M&Aセンターホールディングス)から分社化されて設立され、分社化から約8年という比較的短期間でIPOを実現しています。
親子上場という特徴を有しています。

初値は公開価格の約2.5倍となる1,674円を付け、市場の高い評価を受けた上場となりました。

ストックオプション導入状況

当社はストックオプションを導入しております。

潜在株比率(ストックオプション比率)の水準

株式の総数に対する新株予約権による潜在株式の割合は希薄化後ベース16.34%です。

IPO準備企業では、ストックオプションによる潜在株比率(希薄化率)は10〜15%程度となる事例が比較的多く見られます。本事例の16.34%(希薄化後ベース)は、一般的なレンジと比較すると、やや高水準の設計といえます。

ストックオプションの発行回数、種類、内容

ストックオプションの発行回数、種類

発行回数は全5回ですが、第1回(信託型)は失効・消却済みのため、上場申請時点では4つの回号が残存しています。

ストックオプション発行内容

ストックオプションの内容に関する開示資料は以下の通りです。

読みやすさの観点から、一部加筆・省略を行っています。

回号第2回新株予約権第3回新株予約権①第3回新株予約権②第4回新株予約権
ストックオプション種類(執筆者推計)税制適格ストックオプション税制適格ストックオプション税制適格ストックオプション税制適格ストックオプション
決議年月日2022年9月30日2024年7月12日2024年9月13日2025年3月14日
付与対象者の区分及び人数(名)当社取締役3名取締役1名、従業員5名当社従業員17名取締役1名、従業員91名
新株予約権の数(個)〔 〕上場申請時4,5001,5009301,570〔1,494〕
新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株)〔 〕上場申請時普通株式4,500〔450,000〕普通株式1,500〔150,000〕普通株式
930〔93,000〕
普通株式1,570〔149,400〕
新株予約権の行使時の払込金額(円)〔 〕上場申請時11,000〔110〕42,000〔420〕42,000〔420〕42,000〔420〕
新株予約権の行使期間〔 〕上場申請時2024年10月1日〜2032年9月30日2027年1月1日〜2034年5月31日2027年1月1日〜2034年5月31日2027年6月1日〜2034年5月31日
新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円)〔 〕上場申請時発行価格11,000〔110〕
資本組入額5,500〔55〕
発行価格42,000〔420〕
資本組入額21,000〔210〕
発行価格42,000〔420〕
資本組入額21,000〔210〕
発行価格42,000〔420〕
資本組入額21,000〔210〕
新株予約権の行使の条件    
①継続勤務条件条件付条件付条件付条件付
②上場条件条件付条件付条件付条件付
③相続人行使条件なし(行使不可)なし(行使不可)なし(行使不可)なし(行使不可)
④その他なしなしなしなし

第1回は信託型ストックオプションでしたが、上場申請時にはすべて失効しています。2023年に国税庁が信託型ストックオプションの課税上の取扱いに関する見解を公表したことの影響と考えられます。

残存する全4回号は開示資料上明示されていませんが、行使価額や行使条件等から、全て税制適格ストックオプションと推定されます。

権利行使価額について

第2回:11,000円(株式分割後110円)
上記以外:42,000円(株式分割後420円)

となっております。いずれも決議時点(株式分割前)の価額です。

権利行使価額はDCF法による算定株価を参考に設定されています。

権利行使条件について

継続勤務条件、上場条件、相続人行使条件

全回号で統一された条件となっています。

継続勤務条件:あり(一部例外規定あり)
上場条件:あり(一部例外規定あり)
相続人行使条件:なし(相続人行使不可)

付与対象者別付与状況

階層別の付与数状況

開示資料から付与内容の判明している対象者について整理すると、以下の通りです。

人数潜在株式数潜在株式比率1人当たり潜在株数1人当たり潜在株式比率
代表取締役1150,0002.91%150,0002.91%
取締役4370,0007.18%92,5001.79%
従業員83322,4006.25%3,8840.08%

代表取締役は1人当たり2.91%、取締役(代表除く)は1人当たり1.79%、従業員は1人当たり0.08%となっており、役職・責任範囲に応じたメリハリのある設計となっています。

付与のばらつき状況

取締役についてばらつき状況を確認してみます。

最大付与数と最小付与数には約2.1倍の差があります。

取締役人数株数
最大値2150,000
中央値 150,000
最小値170,000

なお、従業員についてはその他に複数名が含まれており個別明細を分析することは不可能でした。

在職者に対する付与割合

「ストックオプションは従業員全員に付与しなければならないのか?」
は、IPO準備企業から非常によくいただくご質問です。

在職者のどの程度の比率に付与されているかを推計しました。

付与人数総数比率
代表取締役11100.00%
取締役44100.00%
従業員8312665.87%

代表取締役・取締役へは全員(100%)、従業員へも65.87%と幅広く付与されており、全社的な動機づけを重視した設計といえます。

当社のストックオプションの特徴

当社のストックオプションの特徴は以下の通りです。

潜在株比率16.34%、従業員付与比率65.87%

信託型ストックオプションを消却して税制適格ストックオプションを発行

潜在株比率16.34%、従業員付与比率65.87%

上述の通り当社の潜在株比率は15%超となっております。

また従業員への付与比率は約65%となっております。

一般的なIPO準備企業と比較しても、比較的高い水準の設計といえます。

親会社が筆頭株主であり、VC等の外部株主比率が相対的に高くない株主構成も影響している可能性があります。

信託型ストックオプションを消却して税制適格ストックオプションを発行

当社は2022年に第1回新株予約権を信託型ストックオプションとして発行していますが、2025年3月期に失効、消却しております。

2024年7月以降に第3回①、第3回②、第4回の3回の新株予約権を8か月以内に立て続けに発行しています。

この3回の新株予約権による潜在株式数合計は40万株(付与決議日時点)であり、消却された信託型ストックオプションの株数と一致しております。
信託型ストックオプションの代替として3回の税制適格ストックオプションを発行していると推定されます。

この推移からは以下の通りと推察されます。

2023年5月の国税庁による「信託型SOへの課税方針」の明確化を受け、同社は迅速に動いています。
・消却: 第1回(信託型)を消却し、税務リスクを遮断。
・再発行: 8か月以内に第3回①②・第4回として、信託SOと同数の40万株を税制適格SOで再付与。
・示唆: IPO審査において税務リスクの放置は重要な問題になり得ます。

本事例は、専門家と連携し「制度の再構築」に成功した代表的事例と言えるでしょう。

信託型ストックオプションについて詳しく知りたい方はシリーズコラム第6回「税制非適格ストックオプションとは」をご覧ください。

まとめ

本事例からは、以下の実務的示唆が読み取れます。

・潜在株比率16%超でもIPOは可能
→ ただし株主構成や成長性とのバランスが重要

・従業員への広範付与はエンゲージメント強化につながる可能性
→ 一方で将来希薄化とのバランス設計が必要

・信託型SOの税務論点には迅速対応が重要
→ IPO準備では税務リスクの未整理は大きな論点となり得る

第12回はSQUEEZEの予定です。

非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要

ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。

特に報酬制度としてのストックオプションの位置付けは効果発現の成否を左右する重要な判断となります。
経験豊富な専門家に相談されることをおすすめします。

Gemstone石割公認会計士事務所が選ばれる理由

・非上場株式株価算定、スタートアップ向けストックオプション評価・設計支援の専門事務所

・累計1000件超、年間100件超の株価算定、ストックオプション評価実績

・2014年以降累計30件超の新規IPOに関与

・豊富な監査法人監査・上場審査対応経験

Gemstone石割公認会計士事務所では、
ストックオプション発行のための株価算定サービス
税制適格ストックオプション設計支援サービス
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を実施しています。

≫ストックオプション発行目的株価算定サービス
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ご相談内容に応じて、次のような点を整理します。

  • 「自社の場合、潜在株比率は何%が適切か」
  • 「税制適格SOと有償SOのどちらが適切か」
  • 「IPO審査上問題ない設計か」

    など、初回相談で整理可能です。

制度設計に着手する前にご相談いただくことをおすすめします。

スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内

IPO準備企業向けにストックオプションの制度・税務・実務を体系的に解説しています。

1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら

2 ストックオプションの種類と税金の違い →こちら

3 税制適格ストックオプションの9要件 →こちら

4 税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバー →こちら

5 有償ストックオプションとは →こちら

6 税制非適格ストックオプションとは→こちら

7 ストックオプション発行会社の会計・税務→こちら

8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項(リリース予定)

9 ストックオプション発行の実務プロセス(リリース予定)

10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)

こちらもご覧ください。

この記事を書いた人

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

非上場株式株価算定、ストックオプション評価・設計支援を専門とする公認会計士・社会保険労務士
公認会計士(日本公認会計士協会東京会 正会員)
社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)

大学卒業後メガバンク勤務を経て、Gemstoneグループに入社。
株価算定およびストックオプション評価業務を中心に担当し、2025年には年間139件の算定・評価業務を担当。