スタートアップのためのストックオプション入門コラム第3回をご覧いただきありがとうございます。
税制適格ストックオプションは、株式売却時のみ約20.315%(住民税含む)譲渡所得課税(分離課税)となる有利な制度です。
しかし租税特別措置法29条の2に定められた要件を一つでも満たさない場合、税制非適格となり権利行使時に最大約55%(所得税・住民税・復興特別所得税含む)給与課税(総合課税)が発生する可能性があります。
「税制適格SOの要件を一覧で知りたい」
「非上場企業でも使えるのか」
「年間1,200万円制限とは」
といったご質問を良く頂戴します。
そこで本記事では、以下の論点を整理します。
・税制適格ストックオプションの9つの税制適格要件
・IPO・M&A時に問題となる落とし穴
・税制適格要件遵守のためのチェック項目
制度設計段階での判断は、将来の税務リスクや上場準備に大きな影響を与えます。
スタートアップやIPO準備企業が、自社の状況に応じて税制適格ストックオプション発行を検討するための基礎知識を、年間100件超の評価実績を持つ公認会計士が実務目線で分かりやすく整理していきます。
【結論まとめ(先に知りたい方へ)】
・「税制適格ストックオプション」の設計において、税制適格条件9項目を全て充足する必要がある。
・税制適格要件の中には誤解の生じやすい項目も含まれている。
・チェックリストでセルフチェックの上で専門家に確認してもらうことが望ましい。
税制適格ストックオプションとは【非上場スタートアップ向け】
・税制適格ストックオプションは税制適格要件を充足しているストックオプションである
・税制適格ストックオプションは付与対象者の経済的負担が低いメリットがある
税制適格要件を充足しているストックオプションのこと
ストックオプションとは会社がその役員・従業員に対し報酬の一形態として付与する制度です。
一定の期間内にあらかじめ定められた価格で、会社の株式を取得することができる権利を付与する取引をいいます。
ストックオプションにはその発行形態・条件設定に応じて実務上以下の3種類が中心となります
・税制適格ストックオプション
・税制非適格ストックオプション
・有償ストックオプション
このうち税制適格ストックオプションは租税特別措置法(以下、租特法)第29条の2に規定されている各条項の条件(税制適格要件といいます)に全て合致するものを税制適格ストックオプションといいます。
本記事では、ストックオプションを受け取る役員・従業員等を「付与対象者」、ストックオプションを発行する会社を「発行会社」と呼びます。
税制適格ストックオプションのメリット・デメリット
それでは税制適格ストックオプションのメリット・デメリットをおさらいしましょう
第2回コラムでより詳細に説明しておりますのでそちらもご覧ください。
≫第2回ストックオプションの種類と税金の違いを徹底解説― 税制適格・非適格・有償ストックオプションの比較 ―
| 種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 税制適格ストックオプション | 売却時のみ約20.315%(住民税含む) 譲渡所得課税(分離課税)は繰延 付与時支払い負担なし 【付与者の負担は最も軽い】 | 条件設定に制約あり |
| 税制非適格ストックオプション | 条件設定が自由 | 権利行使時に最大約55%(所得税・住民税・復興特別所得税含む))給与課税(総合課税) |
| 有償ストックオプション | 売却時のみ約20.315%(住民税含む) 譲渡所得課税(分離課税)は繰延 ※一定要件充足必要 条件設定が自由 | 付与時に対価支払が必要 |
税制適格ストックオプションの要件一覧【非上場企業】
・税制適格要件は9種類ある
・9つの要件のうち、一つでも欠けると税制非適格となる
・要件には付与時の要件と、権利行使時・後の要件がある
9種類の要件一覧
| 要件区分 | 概要 |
|---|---|
| ①発行会社 | 株式会社であること(国内法人であること) |
| ②付与形態 | 無償発行であること |
| ③対象者 | 発行会社およびその子会社の取締役、執行役、使用人であること ※大口株主(発行済株式の1/3超を保有)やその親族等は除く |
| ④権利行使期間 | 付与決議日から2年経過後~10年以内に限ること ※15年以内の場合あり |
| ⑤権利行使価額年間合計額 | 年間の権利行使価額合計が1,200万円を超えないこと ※3,600万円・2,400万円の場合あり |
| ⑥権利行使価額 | 1株あたりの権利行使価額が、契約締結時の株価(時価)以上であること |
| ⑦譲渡制限 | 新株予約権の譲渡が禁止されていること |
| ⑧株式の交付 | 株式交付が当該交付のために付与決議がされた会社法第238条第1項に定める事項に反しないで行われること |
| ⑨株式保管 | 行使により取得した株式を証券会社等もしくは発行会社が保管管理すること |
要件は全て充足しなければならない
9種類の要件がありますが、税制適格ストックオプションと認められるためには、9種類すべてが充足されていなければなりません。
要件は付与時に充足するものと権利行使時・後に充足するものが混在している
要件は付与時に充足していなければいけない条件だけではありません。
権利行使時に充足しなければいけない要件(⑤権利行使価額年間合計額要件、⑧株式の交付要件)や権利行使後に充足が必要な要件(⑨株式保管要件)も含まれています。
このことから以下の3点について理解する必要があります
権利行使時(後)に税制非適格にならないような会社の管理が重要である
典型例は⑤権利行使価額年間合計額要件です。
付与対象者はもちろんですが、権利行使を受け付けた段階で会社が限度超過のアラームを発信できるよう管理することが望ましいです。
このように付与時の制度設計だけでなく、付与後の行使管理も非常に重要だということになります。
一回のストックオプションに税制適格と税制非適格が混在することもあり得る
特定の付与者が⑤権利行使価額年間合計額要件を超過した場合には当該ストックオプションは非適格になります。
しかし同時に発行されたストックオプションが全て税制非適格になるわけではありません。
税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションは同一回号内で適格・非適格が混在することは制度上想定されています。
税務署への調書届出も重要
各回号のストックオプションに税制適格と税制非適格が混在する可能性があるため、付与調書、行使調書といった税務署への届け出が制度化されています。
税制適格要件を充足するのと同様に実務上重要なポイントになります。
発行会社要件 税制適格要件①
・国内法人のみで海外法人は対象外
・国内法人に勤務していても発行会社が海外親会社等の場合には適格にはならない
発行会社要件について
税制適格要件①
発行会社が内国法人である株式会社であること
租税特別措置法条文中で発行主体を「株式会社」と定義していることから、発行会社については国内法人である株式会社のみであると解されています。
発行会社要件の間違いやすいポイント
国内法人勤務でも海外親会社株式対象であれば税制非適格になる【間違いやすいポイント】
海外企業日本子会社社員が、「親会社からストックオプションを付与されたが自分は国内法人勤務だから税制適格ストックオプションだ」と混同されている場合があります。
国内法人従業員に対するストックオプションであっても、親会社である国外法人株式を行使対象とするストックオプションであれば全て税制非適格となり、権利行使時に給与課税の対象となります。
付与形態 税制適格要件②
・税制適格ストックオプションは無償発行のみ
・無償発行だからといって行使価額が0なわけではない
付与形態要件について
税制適格要件②
無償発行のみが対象になる
こちらも形式上は「要件」というより制度の定義規定ですが、実務上は必ず満たす必要があります。
付与要件の間違いやすいポイント
行使価額0円ではありません【間違いやすいポイント】
無償発行と行使価額を勘違いされる場合があります。
無償発行とはあくまでも付与時に金銭支払いが発生しない発行形態ですので、権利行使時には行使価額×株数分の金銭支払いが必要になります。
対象者要件 税制適格要件③
・対象者は取締役、執行役、従業員、社外高度人材
・大口株主とその親族等は対象外となる
対象者要件について
税制適格要件③
以下の対象者に対して発行されたストックオプションである必要がある
〇発行会社の取締役、執行役及び使用人
(除く大口株主・特別関係者)
〇発行会社が過半数を保有する関係会社の取締役、執行役及び使用人
〇社外高度人材
〇発行会社・関係会社の取締役、執行役及び使用人の相続人
こちらも形式上は「要件」というより制度の定義規定ですが、実務上は必ず満たす必要があります。
大口株主、特別関係者は対象外|税制適格ストックオプションの持株比率要件
大口株主は持株比率1/3超
発行会社の取締役、執行役及び使用人(以下、取締役等といいます)であっても、大口株主とその特別関係者は対象外となり、税制非適格ストックオプションとなります。
大口株主の定義は非上場企業の場合には以下の通りです(租特法施行令 第19条の3 第4項)
〇付与決議の日において、当該株式会社の発行済株式の総数の三分の一を超える数の株式を保有する者
特別関係者の定義は以下の通りです。
〇(大口株主の)配偶者並びに直系血族、二親等内の親族及び前号に掲げる者と婚姻関係と同様の事情にある者
〇(大口株主・特別関係者が)他の会社を支配している場合における当該他の会社
創業者等の持株比率1/3超の大口株主とその親族は対象外となると認識して頂くと良いと思います。
社外高度人材に認められるためには条件がある
社外高度人材とは
社外高度人材とは会社と雇用関係が無く外部委託等で会社に貢献している人材のうち資格・能力・過去実績等で一定の基準を満たす高度の専門性を有する人材のことです。
令和6年税制改正で社外高度人材の認定基準が緩和になり、社外高度人材への税制適格ストックオプション付与を検討される会社も増えてきています。
事業計画の承認を受けなければ社外高度人材とは認められません【間違いやすいポイント】
社外高度人材に税制適格ストックオプションを付与するためには、事前に「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」を策定し、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。
この手続きには数か月を要する場合もあり、余裕を持ったスケジュール設定が必要になります。
対象者に関するよくある勘違い
大口株主に該当するかの判断基準日は付与日現在です【間違いやすいポイント】
付与決議日現在で発行済株式の25%を保有する取締役等向けにストックオプションを10%発行する場合は、大口株主には該当しません。
付与決議日現在での25%が判断基準になります。
大口株主の判定には行使前のストックオプションは含まれない【間違いやすいポイント】
政令上「株式を保有する者」とされており、株式転換前の潜在株式は含まれないと解されます。
上場企業とは大口株主の基準が相違します【間違いやすいポイント】
上場企業の場合は10%が大口株主の基準ですが非上場企業は1/3超と相違しています。
権利行使期間 税制適格要件④【非上場企業】
・権利行使期間は付与決議日から2年経過後から10年以内
・15年以内に延長される場合がある
・開始日も最終日も応当日では無い
権利行使期間要件
税制適格要件④
権利行使期間は2年経過後から10年以内
(条件充足する場合は15年以内)
権利行使期間とは
権利行使期間とは付与対象者が権利行使して株式を購入可能な期間のことです。
税制適格ストックオプションの権利行使期間は付与決議の日から2年を経過した日から10年以内でなければいけません。
必ず10年ということではなく、この範囲内の設定であれば許容されます。しかし最長の期間設定が実務上は多いです。
権利行使期間が15年まで認められる場合【令和5年税制改正】
設立5年未満の非上場企業
令和5年税制改正で以下の条件を満たす企業の発行する税制適格ストックオプションの権利行使期間は2年経過後最長15年以内とすることが認められました。
権利行使期間が最長15年になる要件
・付与決議日において設立5年未満であること
・一定の成長企業要件を満たす非上場企業
租特法施行令 第19条の3第1項第2号
設立から日の浅い企業ではIPOまで期間を要する事例も多く、IPO前での行使期間期限切れ防止を制度趣旨として導入されています。
権利行使期間に関するよくある勘違い
経過した日、経過する日は応当日ではありません【間違いやすいポイント】
権利行使可能開始日と権利行使可能最終日を付与決議日の2年応当日、10年応当日だと勘違いされる場合が実務上あります。
2026年1月31日付与決議日とすると
2年を経過した日から:2028年2月1日から
10年以内(経過する日まで):2036年1月30日まで
法律特有の言い回しになりますので気を付ける必要があります。
形式的な要件相違であっても税制非適格となるため、慎重な設計が必要です。
こういう事態を回避するためにも必ず法律の専門家に書類作成、登記手続きを依頼されることをお勧めします。
権利行使価額年間合計額 税制適格要件⑤【非上場企業】
・権利行使金額年間合計金額は1,200万円以内
・条件に合致する企業は2,400万円以内もしくは3,600万円以内になる
権利行使価額年間合計額要件
税制適格要件⑤
税制適格ストックオプションの行使に係る権利行使価額の年間合計額が1,200万円を超えないこと
(条件に合致する場合は2,400万円以内もしくは3,600万円以内)
権利行使価額
年間に複数回権利行使した場合は合計額が1,200万円以内であることが必要です。
複数の会社が発行した税制適格ストックオプションについても合計する必要があります。
年間合計額が3,600万円、2,400万円まで認められる場合【令和6年税制改正】
令和6年税制改正で1,200万円の権利行使限度額が、設立年数等に応じて引き上げられました。
特にレイターステージで発行されたストックオプションは行使価額が高い場合があり、1,200万円が上限であることにより発生している実務上の問題への対応を制度趣旨として導入されています。
| 要件 | 限度額 |
|---|---|
| 設立の日以後5年未満の株式会社 非上場であること | 2,400万円 |
| 設立の日以後5年以上20年未満の株式会社 非上場であること | 3,600万円 |
| 設立の日以後5年以上20年未満の株式会社 上場後5年未満であること | 3,600万円 |
設立年数判定は契約締結日基準
設立年数判定の基準日となるのは契約締結の日であることにも注意が必要です。
設立20年目の会社は契約締結まで完了させるように期日管理をすることが重要です。
権利行使価額年間合計額に関するよくある勘違い
年間合計額は複数会社の行使価額を合算します【間違いやすいポイント】
複数会社のストックオプションを保有する方も最近は見かけるようになりました。
年間合計額は会社単位ではなく付与対象者個人単位で算定します。
従ってA社で1,200万円、B社で1,200万円を行使した個人の権利行使価額年間合計額は2400万円になります。
上場後5年経過後に3,600万円が1,200万円に減額になりません【間違いやすいポイント】
上場前に付与したストックオプションは、上場後5年経過したら限度額が3,600万円から1,200万円に減額されますか?というご質問を受けたことがありますが、間違いです。
権利行使年間合計額限度の特例は「付与決議日において」設立年数条件が判定されます。
上場5年後未満というのは上場企業の場合は付与決議日時点で上場5年目未満の株式会社は3,600万円、5年以上なら1,200万円という意味です。
未上場企業が上場して5年経過すると3,600万円が1,200万円に減額されることではありませんので注意してください。
合計額限度は権利行使時の株価ではありません【間違いやすいポイント】
こちらもよくある勘違いですが限度額計算は権利行使時の株価には無関係で
権利行使価額×権利行使するストックオプション個数
で計算される金額になります。
株価が上昇する前に権利行使を急ぐ必要はありません。
権利行使価額 税制適格要件⑥【非上場企業】
・行使価額は契約締結時における時価以上
・付与決議日の時価では無い
権利行使価額要件
税制適格要件⑥
権利行使価額は、契約締結時における1株当たりの価額に相当する金額以上であること
2023年以前は議論になった要件であった
1株当たりの価額の計算方法については過去においては諸説入り乱れていました。
非上場株式の株価算定には複数方法があるため、時価以上との認識で行使価額を決定しても税務当局に否認されるリスクが完全に払拭できないことが原因でした。
2023年に国税庁が通達改正により評価特例(いわゆるセーフハーバールール)が明確化されたことで実務上の不確実性は大幅に低減しています。
1株当たりの価額の計算方法【非上場株式】
特例方式(いわゆるセーフハーバールール)とは
2023年に国税庁は
「租税特別措置法等(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)
を発信し、税制適格ストックオプション権利行使価額決定のための特例方式という特別な算定ルール(いわゆるセーフハーバールール)を定めました
詳しくは第4回で説明しますが、優先株で資金調達を実施しているスタートアップの多くで一定条件下で普通株式の評価額が非常に低い価額となり、条件によって行使価額1円でのストックオプション発行も許容される内容となっております。
実務上はセーフハーバールールと公正価値評価が混在している
セーフハーバールール導入後においてスタートアップ企業の発行する税制適格ストックオプションの権利行使価額は、セーフハーバールールを利用した設定と従来からの財務上の株価(公正価値)での設定が混在している状況です。
セーフハーバールール利用時には株式報酬費用計上の必要があることが要因の一つとなっています。
コラム第4回で詳細に解説します。
セーフハーバールールの算定方法、メリットデメリット等税制適格ストックオプションの権利行使価額の決定方法についてはコラム第4回で詳細解説しますのでそちらを参照願います
権利行使価額に関するよくある勘違い
株主総会決議日ではなく、『契約締結日』の時価が基準です【間違いやすいポイント】
付与決議を早目に終わらせて数か月後に付与をすれば株価(この場合は公正価値を示すことが多いです)を固定できるという誤解をされる事例もあったようです。
株価は「契約締結日」の時価が基準となりますので正しくありません。
付与決議から契約締結までの間隔が開くことで決議時から株価が上昇してしまうリスクが発生してしまいます。
譲渡制限 税制適格要件⑦
・譲渡が制限されていなければいけない
・譲渡制限に違反すると税制非適格になる
譲渡制限
税制適格要件⑦
譲渡をしてはならないこととされていること
通常は問題になることはない
譲渡制限が付与されていることが要件とされています。
付与時にこの要件については問題となることはほとんど無いと思います。
M&Aの際に問題になる場合が多い
M&A発生時等で買い手が新株予約権を購入するといった場合に問題が発生します。
買い取る場合には譲渡制限を外す必要がありますが、制限が外れた時点で税制非適格ストックオプションとみなさされます。
このため売却した付与対象者は給与課税を課せられることになります。
(出典:国税庁質疑応答事例「被買収会社の従業員に付与されたストックオプションを買収会社が買い取る場合の課税関係」)
譲渡制限に関するよくある勘違い
税制非適格ストックオプションも譲渡制限を付けないとデメリットがあります【間違いやすいポイント】
税制非適格ストックオプションは条件設定は自由に設定可能です。
しかし譲渡制限が付されないで無償付与された場合には、付与時に報酬が支払われたとみなされます。
付与対象者はすぐに当該ストックオプションを売却して利益を計上することが可能であるからです。
このため付与対象者にはストックオプション時価相当額に給与課税が課せられてしまうというデメリットが生じます。
税制適格要件には直接関係しませんが、実務上注意が必要な点です。
株式の交付 税制適格要件⑧【非上場企業】
・付与時の特別決議通りに株式を交付しなければならない
・議事録、要項、契約書、登記の内容一致も必要
株式交付要件
税制適格要件⑧
ストックオプション行使による株式交付が付与決議がされた会社法第238条第1項に定める事項に反しないで行われるものであること
ストックオプションの「内容」と交付内容の一致が要件
分かり難い表現なのでよくご質問を頂戴します。
会社法238条第1項はストックオプション(条文上は募集新株予約権)発行前に決定しなければいけないストックオプションの「内容」についての条文で、税制適格ストックオプションの場合には具体的に以下の事項です。
・内容と数(株式種類、権利行使価額、権利行使期間等々)
・無償であること
・払込金額
・割当日
実務上は契約書、登記事項と決議内容の一致も要チェック
条文上は行使時の付与株式に関する要件ではありますが、実務上は権利行使時の交付条件だけではなく、新株予約権割当契約書および登記事項も特別決議内容とも一致していることが必要とされています。
株式交付に関するよくある勘違い
特別決議を受けても変更であっても非適格になってしまいます【間違いやすいポイント】
再度特別決議を受けても、税制適格要件に関わる内容変更を行った場合には原則として税制非適格になってしまいます。
ただし当初契約の範囲を越えない場合には税制適格が認められる場合もありますので、弁護士・司法書士に確認願います。
株式保管要件 税制適格要件⑨【非上場企業】【令和6年税制改正】
・行使後の株式は金融商品業者か会社による保管管理が必要
・IPOする場合には実務上問題にならない
・M&A時の問題解消のため令和6年税制改正で変更された
株式保管要件
税制適格要件⑨
行使により取得する株式は以下のいずれかの方法で保管すること
〇証券会社等による保管管理
〇発行会社により租税特別措置法施行令に規定される要件を満たす方法で保管管理
上場する場合
誤解されている方が多いので最初に記載しますが、上場後は実務上問題になることはまずありません。
(上場前に行使する場合を除く)
上場株式は原則として保管振替機構で管理されるため要件を充足されることになるからです。
M&Aの場合
この要件が問題になるのはM&A取引時に行使を認める場合および、上場前に権利行使を認める場合になります。
従来M&Aの際に時間的猶予・コスト負担等の兼ね合いで証券会社等に保管管理を委託することが出来ず、税制適格ストックオプションの権利行使を断念する事例が発生していたようです。
こういった弊害を解消するために発行会社による保管管理が新たに認められています。
具体的な方法については、経済産業省が区分管理の方法と様式例をホームページ上で公開しております。
保管管理要件に関するよくある勘違い
発行会社保管管理要件を充足してもどんな相手にも売却可能ではありません【間違いやすいポイント】
IPO前に行使後の会社による保管管理中の株式は、「法人もしくは金融商品取引業者への委託」のみ売却が認められております。
税制適格ストックオプション設計の実務チェックリスト(まとめ)
非上場企業が税制適格ストックオプションを設計する際に確認すべき税制適格要件チェック項目です。
①発行会社要件
□国内法人、株式会社である
②無償要件
□要項等に要件を充足する記載がされている
③ 対象者要件
□ 付与対象者は取締役・執行役・従業員である
□ 監査役・業務委託者は含まれていない
□ 大口株主(1/3超)に該当しない
□大口株主の親族等は含まれていない
□ 社外高度人材の場合、経産省認定手続を確認している
④権利行使期間要件
□ 関係書類の記載が付与決議日から2年以上経過後からになっている
□ 関係書類の記載が行使期間は10年以内(15年以内)かを確認している
□日付設定は誤っていないことを専門家に確認している
⑤ 年間行使限度額要件
□ 年間行使額は1,200万円、2,400万円、3,600万円のいずれかが正しく選択されていることを確認している
(前回の契約書類を流用する場合には特に注意)
□ 要項、契約書に正確な表現で記載されている
□ 複数回付与の場合の通算管理体制を整備している
⑥ 権利行使価額(時価)要件
□ 契約締結日時点の時価以上で設定している
□ 株価算定書を取得している(第三者算定が望ましい)
□ セーフハーバールールの適用可否、利用時のデメリットを確認している
□ 株式報酬費用計上要否を確認している
⑦ 譲渡制限要件
□要項等に要件を充足する記載がされている
⑧特別決議一致要件
□要項等に要件を充足する記載がされている
□会社法238条の決議内容と整合している
□ 契約書と株主総会議事録が一致している
⑨ 株式保管要件
□要項等に要件を充足する記載がされている
注意事項
本チェックリストは税制適格ストックオプション制度に関する一般的制度解説および実務上の確認事項を整理した情報提供を目的とするものです。
特定の事案に対する税務判断、税額計算、適法性の保証、または個別具体的な税務アドバイスを提供するものではありません。
制度設計にあたっては、資本構成、付与対象者の属性、株価算定方法、最新の税制改正動向等により結論が異なる場合があります。
最終的な判断および具体的な制度設計については、必ず関与税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。
税制適格要件に関するQ&A
Q1 税制適格ストックオプション発行を検討していますが、対象外である大口株主親族への発行も検討しています。2回のストックオプション発行が必要ですか
A1 いいえ
税制適格要件は付与対象者毎に判定されますので、税制非適格ストックオプションが混在しても問題ありません。内容が全て同一であれば1回のストックオプションを発行することが可能です。
Q2 監査役には税制適格ストックオプションを発行できますか
A2 いいえ
取締役・執行役・従業員には監査役は含まれません
監査役への発行時には税制非適格もしくは有償ストックオプション発行が必要になります
Q3 従業員に税制適格ストックオプションを付与した後に退職しました。従業員ではなくなったので非適格になりますか
A3 いいえ
対象者要件は付与決議日時点で従業員であれば要件充足となります。
その後に退職しても税制適格ストックオプションであることに変化はありません。
ただし多くの株式会社で権利行使時に役員・従業員等であることを行使条件としている場合があります。
この場合には権利行使できませんので注意が必要です。
Q4 税制適格ストックオプションを相続した場合は譲渡されているので税制非適格になりますか
A4 いいえ
会社法上は株式や新株予約権の相続は譲渡ではなく一般承継と解されます。
従って税制適格のままということになります。
しかし相続人による権利行使を不可としている場合が多いので注意が必要です。
まずは専門家に相談してください
ここまでお読みいただき、次のような不安や疑問を感じられた方も多いのではないでしょうか。
・自社のストックオプションは税制適格ストックオプションとして発行できるのか分からない
・税制適格SOの要件を満たせない場合、有償SOと税制非適格SOのどちらが適切か判断できない
・有償ストックオプションの評価額(公正価値)が妥当か不安
ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。
特に税制適格要件充足は効果発現の成否を左右する重要な判断となります。
経験豊富な専門家に相談されることをお勧めします。
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・最新税制への完全対応: ストックオプションのセーフハーバールールなど、最新の税制改正を踏まえた最適なアドバイスが可能です 。
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ご相談内容に応じて、次のような点を整理します
貴社の状況で、税制適格ストックオプションが利用可能かの整理
税制適格SO行使価額を1円にすべきかどうか
有償ストックオプション評価額(公正価値)の考え方、実務上の留意点
行使価額設定のための株価算定
『まだ具体的なスケジュールが決まっていない』『概算費用だけ知りたい』という段階でのご相談も歓迎です
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