新規IPO企業のストックオプション活用状況 2026③ギークリー【SOと従業員持株会の併用】

新規IPO企業のストックオプション活用状況コラムをご覧頂きありがとうございます。

「ストックオプションプールは何%くらいが標準ですか?」
「役員と従業員の比率はどの程度が適当でしょうか?」

ストックオプション評価・株価算定を多数支援してきた中で、特に多いご質問です。

ストックオプション導入を決めた後も制度設計で悩まれる経営者・CFOは非常に多いです。

ストックオプションは報酬制度の一環であり、最適な設計は企業ごとに異なります。
しかし実務では「他社はどの程度付与しているのか」を気にされる経営者・CFOが非常に多いのも事実です。

本コラムはそういった皆様に向けて新規IPO企業がストックオプションを導入しているか、どのように活用しているかを1社毎に検証します。

IPOに成功した企業の事例を知ることで、IPO準備企業のストックオプション設計の参考となれば幸いです。

【ご注意願います】
なお、本コラム上の数値は全て公開されている新規上場申請のための有価証券報告書の数値を使用しております。一部推定も含まれておりますので事実と相違している可能性もございますのでご了承ください。

2026年3回目の事例は、株式会社ギークリーです

この度の上場を心よりお祝い申し上げます

結論(先に知りたい方へ)

本事例のポイントは以下の通りです。

・潜在株比率は12%とやや高め
・役員中心の付与設計
・従業員には持株会で対応
・対象者ごとに行使条件を変更

IPO準備企業にとって参考になる設計事例といえます。

会社概要

上場申請書上の概要は以下の通りです。

コード505A
業種サービス業
市場東京証券取引所スタンダード市場
主幹事野村證券  
承認日2026/1/22
公開日2026/2/27
事業内容IT・Web・ゲーム業界に特化した人材紹介事業
会社設立年月日2011年8月22日
監査法人PwC Japan有限責任監査法人
初値1,757円
公開価格1,900円
時価総額(公開)24,330 百万円
時価総額(初値)22,498 百万円

2011年8月設立から約14年半でのIPOとなっています。

第1回でお送りしたTOブックスと同様に早期に黒字化しており、スタンダード市場への直接上場となっています。

新規IPO企業のストックオプション導入状況

ストックオプションを導入しています

潜在株比率(ストックオプション比率)の水準

株式の総数に対する新株予約権による潜在株式の割合は希薄化後ベース12.15%です

一般的な10%前後と比較するとやや高い水準です。

ストックオプションの発行回数、種類、内容

ストックオプションの発行回数、種類

発行回数は5回です。(そのうち1回は申請期以降の2025年8月発行です)

第1回、第4回:有償、第2回、第3回、第5回:税制適格と推定されます。

ストックオプション発行内容

ストックオプションの内容についての開示資料は以下の通りです。

分かり易いように執筆者が加筆・省略してあります。

1~4回は同タイミングで発行されていますので、1~4回と5回を分けて比較します。

回号第1回第2回第3回第4回
ストックオプション種類(執筆者推計)有償ストックオプション税制適格ストックオプション税制適格ストックオプション有償ストックオプション
決議年月日2022年12月23日2022年12月23日2022年12月23日2022年12月23日
付与対象者の区分及び人数(名)当社取締役  1当社取締役  3当社従業員  19社外協力者  3
新株予約権の数(個)350,000             300,00058,000
[48,000]
62,000
新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株)普通株式  350,000[700,000]  (注)2普通株式  300,000
[600,000]
普通株式  58,000
[96,000]
普通株式  62,000
[124,000]
新株予約権の行使時の払込金額(円)320[160]320[160]320[160]320[160]
新株予約権の行使期間自  2024年12月27日
至  2032年11月26日
自  2024年12月27日
至  2032年11月26日
自  2024年12月27日
至  2032年11月26日
自  2024年12月27日
至  2032年11月26日
行使時の払込金額発行価格    335.58
[167.79]
資本組入額  168
[84]                 
発行価格    320
[160]
資本組入額  160
[80]
発行価格    320
[160]
資本組入額  160
[80]
発行価格    335.58
[167.79]
資本組入額  168
[84]
新株予約権の行使の条件    
①継続勤務条件なしなしあり(上場後12か月間)あり(上場後12か月間)
②上場条件ありありありあり
③相続人行使条件不可不可不可不可
④業績条件あり:達成済なしなしあり:達成済
⑤株価条件なしなしなし なし
⑤その他   べスティングあり

※[]は上場申請時の数値です。

第1回、第4回が有償ストックオプション、第2回、第3回は税制適格ストックオプションと推定されます。

税制適格対象外の大口株主である取締役、社外協力者には有償ストックオプションを発行しています。

最大の特徴は、取締役と従業員、取締役と社外協力者によって権利行使条件を微妙に変更している点です。

表中に執筆者が色を付けている部分が差異になります。
従業員、社外協力者については上場後12か月経過するまでは権利行使できない期間(いわゆるクリフ)が付与されています。

さらに社外協力者には期間経過により段階的に権利が確定する条件(ベスティング)が設定されています。

回号第5回
ストックオプション種類(執筆者推計)税制適格ストックオプション
決議年月日2025年8月15日
付与対象者の区分及び人数(名)当社取締役1
新株予約権の数(個)34,000
新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株)普通株34,000
新株予約権の行使時の払込金額(円)355
新株予約権の行使期間※自  2027年8月16日
至  2035年7月15日
新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行
価格及び資本組入額(円)
発行価格          355
資本組入額  177.5
新株予約権の行使の条件
①継続勤務条件あり
②上場条件あり(上場後12か月間)
③相続人行使条件不可
④業績条件なし
⑤株価条件なし
⑤その他 

第5回ストックオプションは税制適格ストックオプションですが、新任取締役に追加で付与されたものと推定されます。

権利行使価額について

第1~4回の行使価額は320円、第5回の行使価額は355円で設定されております。

当社は増資は実施していませんが、公正価値評価で行使価額を設定しています。

行使価額が当時の株価算定による公正価値に設定されているため、株式報酬費用は計上されていません。

権利行使条件について

内容から判明した当社の権利行使条件は以下の通りです

第1~5回に共通の行使条件

①継続勤務条件あり(一部差異あり)

②上場条件あり

③相続人による行使不可

第1回、第4回(有償)固有の行使条件

④業績条件あり:2024年5月期から2026年5月期のいずれかの期に、売上高が5,455百万円以上

⑤株価条件なし

有償ストックオプションは条件では業績条件が付与されています。
この条件は達成されています。

付与対象者別付与状況

階層別の付与数状況

代表取締役・取締役・従業員のうち明細の判明している付与人数、個数、持ち株比率、一人当たりの個数は以下の通りです

人数株数合計比率1人当たり株数合計1人当たり比率
代表取締役1700,0005.48%700,0005.48%
取締役3734,0005.74%244,6671.91%
従業員996,0000.77%10,6670.09%
個人224,0000.19%12,0000.10%
合計141,554,00012.18%  

上場申請上の表記のままで記載しております。

「個人」表示されているのは外部協力者を示しているものと思われます。

1人あたり代表取締役約5.5%、取締役約1.9%、従業員・個人(外部協力者)は0.1%と明確な差別化が図られているのが分かります。

付与のばらつき状況

取締役人数株数比率
最大値1400,0003.13%
中央値1200,0001.56%
最小値2134,0001.05%
従業員人数株数比率
最大値316,0000.13%
中央値310,0000.08%
最小値24,0000.03%

取締役、従業員各階層内でのばらつき状況を確認します。

取締役内では最大値と最小値で約3倍の乖離となっています。

従業員内では最大値と最小値で4倍の乖離となっています。

在職者に対する付与割合

「従業員全員にストックオプションを付与しなければいけないですか?」実務上よく受けるご質問です。

在職者のどの程度の比率に付与されているかを推計しました。

付与人数在職総数付与割合
代表取締役11100.00%
取締役33100.00%
従業員93822.36%

当社の特徴がよく現れている数値となっています。

代表取締役・取締役については100%付与されています。

これに対して従業員は2.36%のみの付与に留まっています。

合計9名ですので執行役員クラスが中心と推測されます。

このあとご説明しますが、役員・執行役員にはストックオプション、従業員には従業員持株会という整理が明確になっているように見受けられます。

ギークリーのストックオプション設計の特徴

当社のストックオプション特徴は以下の通りです

役員、執行役員(もしくは部長)に限定して付与している

対象者に応じて権利行使条件を変更している

階層別付与状況は非常にばらつきが大きい

一般社員には従業員持株会で対応している

従業員持株会

従業員持株会は、従業員が自分の会社の株を定期的・継続的に取得し、中長期的な資産形成を行うための社内制度(福利厚生)です。

会社にとっては、以下のメリットが期待されます

  • モチベーション向上
  • 安定株主の確保
  • 採用力の強化

第三者割当増資等の状況欄から当社の持株会は以下のように株式割当を受けています

日付割当株数単価
2024/8/3022,000291.5
2025/2/2829,000340.5
2025/8/2830,000354.5
合計81,000 

2024年に持株会が設立され半年ごとに3回割り当てを受けています。

上場時の持ち株比率は0.63%になります。

仮に上場時の従業員382名全員が加入していた場合には、1名当り

212株(比率0.00165%)

となっています。

ストックオプション付与対象外の従業員に対してもIPO時株価上昇メリットを享受する機会を与える施策として参考になる事例といえるでしょう。

本事例は、以下の点で示唆に富む事例といえます。

・限りあるストックオプションプールのメリハリのある配分

・従業員持株会の設立

第4回は株式会社ベーシックの予定です。

非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要

ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。

特に報酬制度としてのストックオプション位置付けは効果発現の成否を左右する重要な判断となります。
経験豊富な専門家に相談されることをお勧めします。

Gemstone石割公認会計士事務所が選ばれる理由

・非上場株式株価算定、スタートアップ向けストックオプション評価・設計支援の専門事務所

・累計1000件超、年間100件超の株価算定、ストックオプション評価実績

・2014年以降累計30件超の新規IPOに関与

・豊富な監査法人監査・上場審査対応経験

Gemstone石割公認会計士事務所では、
ストックオプション発行のための株価算定サービス
税制適格ストックオプション設計支援サービス
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を実施しています。

≫ストックオプション発行目的株価算定サービス
≫税制適格ストックオプション設計・評価サービス
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30分無料相談を実施しております

ご相談内容に応じて、次のような点を整理します

貴社の状況で、税制適格ストックオプションが利用可能かの整理

税制適格SO行使価額を1円にすべきかどうか

有償ストックオプション評価額(公正価値)の考え方、実務上の留意点

行使価額設定のための株価算定

『まだ具体的なスケジュールが決まっていない』『概算費用だけ知りたい』という段階でのご相談も歓迎です

制度設計に着手する前のご相談をおすすめします。

スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内

IPO準備企業向けにストックオプションの制度・税務・実務を体系的に解説しています。

1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら

2 ストックオプションの種類と税金の違い →こちら

3 税制適格ストックオプションの9要件 →こちら

4税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバー →こちら

5 有償ストックオプションとは (リリース予定)

6 税制非適格ストックオプション(リリース予定)

7 ストックオプション発行会社の会計・税務(リリース予定)

8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項(リリース予定)

9 ストックオプション発行の実務プロセス(リリース予定)

10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)

こちらもご覧ください。

この記事を書いた人

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

非上場株式株価算定、ストックオプション評価・設計支援を専門とする公認会計士・社会保険労務士
公認会計士(日本公認会計士協会東京会 正会員)
社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)

大学卒業後メガバンク勤務を経て、Gemstoneグループに入社。
株価算定およびストックオプション評価業務を中心に担当し、2025年には年間139件の算定・評価業務を担当。