新規IPO企業のストックオプション活用状況コラム第5回をご覧頂きありがとうございます。
ストックオプションの制度設計においては、
「プールは何%が適切か」「役員と従業員の配分はどうするか」
といったご相談を多くいただきます。
本コラムでは、IPO企業の実例をもとに、
ストックオプションの設計・活用実態を解説します。
IPOに成功した企業の事例を知ることで、IPO準備企業のストックオプション設計の参考となれば幸いです。
【免責事項】
本コラムは公開情報に基づき作成しておりますが、一部推計・解釈を含みます。正確性・完全性を保証するものではなく、実務適用にあたっては個別に専門家へご相談ください。
2026年第5回目の事例は、ジェイファーマ株式会社です。
この度の上場を心よりお祝い申し上げます。
会社概要
上場申請書上の概要は以下の通りです。
| 社名 | ジェイファーマ株式会社 |
| コード | 520A |
| 業種 | 医薬品 |
| 市場 | 東京証券取引所グロース市場 |
| 主幹事 | SBI証券 |
| 承認日 | 2026/2/19 |
| 公開日 | 2026/3/25 |
| 事業内容 | SLCトランスポーターをターゲットとした医薬品開発 |
| 会社設立年月日 | 2005年12月26日 |
| 監査法人 | 監査法人銀河 |
| 初値 | 809円 |
| 公開価格 | 880円 |
| 時価総額(初値) | 14,424百万円 |
| 時価総額(公開) | 15,690百万円 |
2005年12月設立から約20年でのIPOです。
また第2回のイノバセルと同様に医薬品開発ディープテック企業なので事業収益0円、営業損失での上場という特徴があります。
初値は公開価格を下回る結果となりました。
ストックオプション導入状況
当社はストックオプションを導入しており、IPO企業としては一般的な設計を採用しています。
潜在株比率(ストックオプション比率)の水準
株式の総数に対する新株予約権による潜在株式の割合は希薄化後ベース7.50%です。
IPO企業におけるストックオプションの潜在株比率は一般的に10%前後とされており、本事例はそれを下回る水準です。
本事例はディープテック企業であり、収益化前段階でのIPOという特徴から、ストックオプション比率はやや抑制的に設計されていると考えられます。
ストックオプションの発行回数、種類、内容
ストックオプションの発行回数、種類
発行種類は12回号です。
第3回,第4回,第5回,第6回,第7回,第9回,第10回,第12回,第13回,第14回,第9-2回,第12-2回です。
第1回,第2回,第8回,第11回はストックオプション以外の新株予約権です。
ストックオプション発行内容
ストックオプションの内容についての開示資料は以下の通りです。
読みやすさのため一部加筆・省略しています。
全体は5つの表で構成されています。
| 回号 | 第3回 | 第4回 | 第5回 |
|---|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 税制適格ストックオプション(一部税制非適格) | 税制適格ストックオプション(一部税制非適格) | 税制適格ストックオプション(一部税制非適格) |
| 決議年月日 | 2016年12月22日 | 2018年6月12日 | 2019年7月25日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 当社取締役 4 当社監査役 1 | 当社取締役 3 当社監査役 1 当社従業員 2 | 当社取締役 4 当社監査役 2 当社従業員 6 |
| 新株予約権の数(個) [ ]:上場申請時個数 | 18,000 | 4,500 | 17,750[7,750] |
| 新株予約権の目的となる 株式の種類、内容及び数(株) [ ]:上場申請時個数 | 普通株式 18,000 [90,000] | 普通株式 4,500 [22,500] | 普通株式 17,750 [38,750] |
| 権利行使価額(円) [ ]:上場申請時価額 | 3,000 [600] | 2,797 [530] | 2,972 [562] |
| 新株予約権の行使期間 | 2019年1月1日 ~2026年5月25日 | 2020年6月12日 ~2028年1月31日 | 2021年7月26日 ~2029年5月31日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円) [ ]:上場申請時金額 | 発行価格 3,000[600] 資本組入額 1,500[300] | 発行価格 2,797[530] 資本組入額 1,399[265] | 発行価格 2,972[562] 資本組入額 1,486[281] |
| 新株予約権の行使の条件 | |||
| ①継続勤務条件 | 条件付 | 条件付 | 条件付 |
| ②上場条件 | なし | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 可 | 条件付 | 条件付 |
| ⑤その他 | アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 |
第3回、第4回、第5回はいずれも税制適格ストックオプション、ただし監査役向けは税制非適格ストックオプションと推計されます。
| 回号 | 第6回 | 第7回 |
|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 税制適格ストックオプション(一部税制非適格) | 税制適格ストックオプション(一部税制非適格) |
| 決議年月日 | 2021年8月27日 | 2023年11月28日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 当社取締役 3 当社監査役 3 当社従業員 17 | 当社取締役(監査等委員であるものを除く) 2 当社監査等委員である取締役 3 当社従業員 17 当社顧問 2 |
| 新株予約権の数(個) [ ]:上場申請時個数 | 44,900[24,300] | 96,268[63,943] |
| 新株予約権の目的となる 株式の種類、内容及び数(株) [ ]:上場申請時個数 | 普通株式 44,900[121,500] | 普通株式 96,268[319,715] |
| 権利行使価額(円) [ ]:上場申請時価額 | 3,154[629] | 1 |
| 新株予約権の行使期間 | 2023年8月28日 ~2031年8月27日 | 2023年11月29日 ~2033年11月28日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円) [ ]:上場申請時金額 | 発行価格 3,154[629] 資本組入額 1,577[315] | 発行価格 1 資本組入額 0.5 |
| 新株予約権の行使の条件 | ||
| ①継続勤務条件 | 条件付 | 条件付 |
| ②上場条件 | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 不可 | 条件付 |
| ⑤その他 | 4年べスティング アクセラレーション条項 | 4年べスティング アクセラレーション条項 行使期間:2025/11~(取締役、従業員) |
第6回、第7回はいずれも税制適格ストックオプション、ただし監査役、監査等委員である取締役、顧問向けは税制非適格ストックオプションと推計されます。
第7回は決議年月日翌日から権利行使可能となっていますが、取締役・従業員は2年後である2025年11月以降権利行使可能との条件が付与されており、その他要件も充足しており税制適格ストックオプションに該当する可能性が高いと考えられます。
| 回号 | 第9回 | 第10回 |
|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 税制非適格ストックオプション | 税制非適格ストックオプション |
| 決議年月日 | 2025年2月25日 | 2025年4月1日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 当社従業員 3 当社派遣社員 1 | 当社取締役(監査等委員であるものを除く) 3 当社監査等委員である取締役 3 |
| 新株予約権の数(個) [ ]:上場申請時個数 | 13,000[10,500] | 114,600[74,600] |
| 新株予約権の目的となる 株式の種類、内容及び数(株) [ ]:上場申請時個数 | 普通株式 13,000[52,500] | 普通株式 114,600[373,000] |
| 権利行使価額(円) | 1 | 1 |
| 新株予約権の行使期間 | 2025年2月26日 ~2035年2月25日 | 2025年4月2日 ~2035年4月1日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の 株式の発行価格及び資本組入額(円)※ | 発行価格 1 資本組入額 0.5 | 発行価格 1 資本組入額 0.5 |
| 新株予約権の行使の条件 | ||
| ①継続勤務条件 | 条件付 | なし |
| ②上場条件 | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 条件付 | 条件付 |
| ⑤その他 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 |
第9回、第10回は従業員、取締役向けではありますが決議年月日翌日から権利行使可能となっており税制非適格ストックオプションと推計されます。(第7回のような行使期間の限定規程は見受けられません。)
| 回号 | 第12回 | 第13回 | 第14回 |
|---|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 税制非適格ストックオプション | 税制非適格ストックオプション | 税制非適格ストックオプション |
| 決議年月日 | 2025年6月30日 | 2025年6月30日 | 2025年6月30日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 当社従業員 4 | 社外協力者 1 | 社外協力者 1 |
| 新株予約権の数(個) [ ]:上場申請時個数 | 15,000 | 4,000 | 4,000 |
| 新株予約権の目的となる 株式の種類、内容及び数(株) [ ]:上場申請時個数 | 普通株式 15,000 [75,000] | 普通株式 4,000 [20,000] | 普通株式 4,000 [20,000] |
| 権利行使価額(円) | 1 | 1 | 1 |
| 新株予約権の行使期間 | 2025年7月1日 ~2035年6月30日 | 2025年7月1日 ~2035年6月30日 | 2025年7月1日 ~2035年6月30日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の 株式の発行価格及び資本組入額(円)※ | 発行価格 1 資本組入額 0.5 | 発行価格 1 資本組入額 0.5 | 発行価格 1 資本組入額 0.5 |
| 新株予約権の行使の条件 | |||
| ①継続勤務条件 | 条件付 | なし | なし |
| ②上場条件 | あり | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 条件付 | 条件付 | なし |
| ⑤その他 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 |
第12回、第13回、第14回は同日に決議されています。
権利行使以外の条件は全て同一であり、税制非適格ストックオプションと想定されます。
| 回号 | 第9-2回 | 第12-2回 |
|---|---|---|
| ストックオプション種類(執筆者推計) | 税制非適格ストックオプション | 税制非適格ストックオプション |
| 決議年月日 | 2025年11月13日 | 2025年11月13日 |
| 付与対象者の区分及び人数(名) | 当社従業員 1 | 当社従業員 1 |
| 新株予約権の数(個) [ ]:上場申請時個数 | 6,000 | 4,000 |
| 新株予約権の目的となる 株式の種類、内容及び数(株) [ ]:上場申請時個数 | 普通株式 6,000 [30,000] | 普通株式 4,000 [20,000] |
| 権利行使価額(円) | 1 | 1 |
| 新株予約権の行使期間 | 2025年11月14日 ~2035年2月25日 | 2025年11月14日 ~2035年6月30日 |
| 新株予約権の行使により株式を発行する場合の 株式の発行価格及び資本組入額(円)※ | 発行価格 1 資本組入額 0.5 | 発行価格 1 資本組入額 0.5 |
| 新株予約権の行使の条件 | ||
| ①継続勤務条件 | 条件付 | 条件付 |
| ②上場条件 | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 条件付 | 条件付 |
| ⑤その他 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 |
第9-2回、第12-2回は回号からも分かる通り、各第9号、12号とほぼ同条件です。
新規入社従業員等に追加発行した税制非適格ストックオプションと想定されます。
権利行使価額について
複数回発行されているため、一覧表で整理します
| 回号 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回以降 |
|---|---|---|---|---|---|
| 権利行使価額(円) [ ]:上場申請時価額 | 3,000 [600] | 2,797 [530] | 2,972 [562] | 3,154 [629] | 1 |
第3回から第4回の行使価額は下落していますが開示情報からは要因は確認できません。
第4回から第6回までは同時期の優先株式発行価額よりも低い権利行使価額が設定されており、株価算定に基づく行使価額設定と推定されます。
第7回以降はセーフハーバーの考え方を踏まえつつ、実務上は行使価額1円での付与(いわゆる1円SO)が採用されています。
セーフハーバールールは、税制適格ストックオプションにおける権利行使価額の設定に関して、一定の条件下で税務上問題とならない価格の目安として用いられるものです。
なお、税制非適格ストックオプションについては、行使価額の設定に法令上の制約はありません。
そのため税制非適格ストックオプションは1円での発行も制度上は可能です。
セーフハーバールールを含めた税制適格ストックオプションの権利行使価額について詳細に知りたい方は、スタートアップのためのストックオプション入門コラム第4回「税制適格ストックオプションの権利行使価額とセーフハーバールール」をご覧ください。
権利行使条件について
回号によって相違が多いのでこちらも一覧表で比較します。
株価条件、業績条件は全回号でありませんので省略しています。
| 回号 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回 | 第9回 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ①継続勤務条件 | 条件付 | 条件付 | 条件付 | 条件付 | 条件付 | 条件付 |
| ②上場条件 | なし | あり | あり | あり | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 可 | 条件付 | 条件付 | 不可 | 条件付 | 条件付 |
| ④その他 | アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 | 4年ベスティング(上場日基準) アクセラレーション条項 | 5年(もしくは)4年ベスティング アクセラレーション条項 行使期間:2025/11~(取締役、従業員) | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 |
| 回号 | 第10回 | 第12回 | 第13回 | 第14回 | 第9-2回 | 第12-2回 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ①継続勤務条件 | なし | 条件付 | なし | なし | 条件付 | 条件付 |
| ②上場条件 | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
| ③相続人行使条件 | 条件付 | 条件付 | 条件付 | なし | 条件付 | 条件付 |
| ④その他 | アクセラレーション条項 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 | アクセラレーション条項 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 | 5年(もしくは4年)ベスティング アクセラレーション条項 |
継続勤務条件(退職者行使)
第10回(取締役向け)、第13回、第14回(いずれも外部協力者向け)以外は全て条件付で付与されています。
第10,13,14回はいずれも2025年に決議されていますので、上場申請が具体化したタイミングであることから、取締役および外部協力者に対しては追加付与の必要性が相対的に低下した可能性があります。
また条件付と記載していますが第6回(2021年8月付与)までは任期満了、定年退職の場合のみが条件になっていました。
第7回(2023年11月付与)以降は上記に加えて以下の記載が追加されています。
新株予約権者の退任または退職の時点において、本④の定めに基づき当該新株予約権が行使可能な上限数とされていた数を上限として新株予約権を行使する場合はこの限りではない。
「本④の定め」とはこの後ご説明するベスティングの規定です。
つまり退職時にベスティングによって行使の権利を得た新株予約権は行使可能とするということです。
実質的に退職者にも権利行使を認めることと理解されます。
権利確定期間(ベスティング期間)
ストックオプションにおけるベスティング(権利確定)とは、一定期間の勤務等を条件として権利が段階的に確定する仕組みであり、IPO準備企業における人材リテンション設計の中核となる重要な要素です。
たとえば「4年間で毎年25%ずつ権利確定する」という設計であれば、1年在籍すると25%、2年で50%、3年で75%、4年で100%の権利が確定します。
ベスティング条件を設けない場合、権利行使期間に入ると付与されたSOの全量を一斉に行使できる状態になります。
この場合、付与対象者が行使と同時に退職するという事態が生じやすく、リテンション効果が機能しないという問題が起きます。
ベスティングはこうした問題を回避するための設計です。
当社では第6回(2021年8月決議)以降の従業員対象の全回号でベスティングが付与されています。
その内容は以下のように徐々に変化しています。
第6回は上場日が基準日だったが、第7回以降は付与日基準日に変更。(従業員有利に変更)
第6回は一律4年だったが、第7回以降は部長以上5年、それ以外は4年に変更。
第7回までは年単位だったが、第9回以上は1年経過後は月単位のベスティングに変更。(従業員有利に変更)
大半が従業員に有利な変更であり、発行目的の最大化のために経営陣が工夫を凝らしていることは非常に示唆に富む内容といえます。
M&A対応のアクセラレーション条項
第4回以降の全ての回号でM&A発生時に権利行使を可能とするアクセラレーション条項が付与されています。
行使可能株数は「ベスティングにより既に確定した個数」を上限としています。未確定分まで一気に確定させる(フル・アクセラレーション)ではなく、あくまで在籍期間に応じた権利のみを保護する設計となっており、既存株主への希薄化懸念に配慮したバランスの良い設計と言えます。
付与対象者別付与状況
最初に注意をさせて頂きます。
この章は上場申請書の【株主の状況】欄記載事項から作成しております。
しかし当社の場合は株主が多数存在するため従業員株主の人数・持ち株比率の状況が分かりません。
多くの項目については推計も不可能な状況になっており、開示情報の制約上、詳細な分析は困難です。
階層別の付与数状況
代表取締役・取締役・従業員のうち明細の判明している付与人数、個数、持ち株比率、一人当たりの個数は以下の通りです。
| 人数 | 株数合計 | 比率 | 1人当たり株数合計 | 1人当たり比率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 代表取締役 | 1 | 250,000 | 1.59% | 250,000 | 1.59% |
| 取締役(監査等委員であるものを除く) | 1 | 150,000 | 0.95% | 150,000 | 0.95% |
| 取締役(監査等委員) | 1 | 51,000 | 0.32% | 51,000 | 0.32% |
| 元取締役 | 3 | 85,000 | 0.54% | 28,333 | 0.18% |
| 参与 | 2 | 88,000 | 0.56% | 44,000 | 0.28% |
| 従業員 | 5 | 107,000 | 0.68% | 21,400 | 0.14% |
| その他 | 26 | 451,965 | 2.87% | 17,383 | 0.11% |
| 合計 | 39 | 1,182,965 | 7.5% |
一部明細のみ判明しておりますので、開示情報の制約上、詳細な分析は困難です。
付与のばらつき状況
開示情報の制約上、全体像の把握は困難です。
在職者に対する付与割合
「従業員全員にストックオプションを付与しなければいけないですか?」実務上よく受けるご質問です。
在職者のどの程度の比率に付与されているかを推計しました。
| 総数 | 株主の状況記載人数 | 第7回付与人数 | 推計付与人数 | 推計付与割合 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 代表取締役 | 1 | 1 | 1 | 1 | 100% |
| 取締役(監査等委員であるものを除く) | 2 | 1 | 2 | 2 | 100% |
| 取締役(監査等委員) | 3 | 1 | 3 | 3 | 100% |
| 従業員 | 16 | 5 | 17 | 16 | 100% |
| その他 | 26 |
ほぼ全取締役、従業員に付与されていると考えられます。
推計の前提は下記の通りです。
※推計前提
第7回付与後の退職者には追加付与されている。
当社のストックオプションの特徴
当社のストックオプションの特徴は以下の通りです。
全取締役・社員への付与
セーフハーバールールによる1円ストックオプション
退職者への権利行使許容(ベスティング範囲内)
月単位のベスティング
税制非適格ストックオプションの従業員への付与
セーフハーバールールによる1円ストックオプション
当社の大きな特徴の一つです。
税制適格ストックオプションは2023年決議第7回の1回のみですが、その後も税制非適格行使価額1円のストックオプションを複数回発行しております。
確認できる直前中間期(2025年9月末)時点で1,190百万円もの新株予約権勘定が確認できており、多額の株式報酬費用を計上しております。
退職者への権利行使許容(ベスティング範囲内)
前章で詳細に説明しましたが、権利行使条件については細かく変更を加えております。
第7回(2023年決議)以降の従業員向けに付与された全ての回号で退職時点でベスティング条件で獲得済のストックオプションについては行使可能とされています。
実際に株主の状況には元取締役、元従業員も記載されています。
月単位のベスティング
ベスティングを付与している会社は多くあります。
しかし年単位で付与される事例が実務上は多いです。
当社では第9回(2025年決議)以降については例えば4年ベスティングであれば以下のような記載が用いられております。
割当日から12か月を経過した日から割当日から48か月経過するまでの行使期間:25%に、
割当日から12か月を経過した日以降に経過した月数に2.08%を乗じた割合を加算した割合
割当日から48か月を経過した日から本新株予約権の権利行使期間の最終日までの行使期間:100%
最初の1年は年単位の付与となります。
しかし12か月経過後は月単位で2.08%(約1/48)が加算される設計になっております。
1ヶ月単位で権利が積み上がるため、従業員にとっては『あと数ヶ月で権利が確定するから』という短期的なモチベーション維持につながりやすく、採用競争力の向上に寄与する設計です。
税制非適格ストックオプションの従業員への付与
2025年に従業員向けの付与された全てのストックオプションは税制非適格になっています。
執筆者もこのような設計は初めて拝見しましたので、その狙いを推測いたします。
(執筆者の私見です)
- 上場申請の確率が高まり、付与直後からの権利行使を可能とするため
- 4年ベスティングにより権利行使個数が年単位で分散されるため給与課税になっても税務上のデメリットが小さいと判断されたため
本事例は、以下の点で最近のストックオプション設計のトレンドを実現されている示唆に富む事例といえます。
・セーフハーバールールの活用
・退職者への権利行使許容
・月単位のベスティング
12回という非常に多いストックオプション発行経験があるために、より良い制度設計を追求された結果として敬意を表します。
第6回はセイワホールディングスの予定です。
非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要
ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。
特に報酬制度としてのストックオプション位置付けは効果発現の成否を左右する重要な判断となります。
経験豊富な専門家に相談されることをお勧めします。
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- 貴社の状況で、税制適格ストックオプションが利用可能かの整理
- 税制適格SOが使えない場合の、有償SO・税制非適格SOの選択肢比較
- 有償ストックオプションの評価額(公正価値)の考え方と実務上の留意点
- 権利行使価額設定のための株価算定
- 現時点で取るべき次の実務ステップの整理
制度設計に着手する前のご相談をおすすめします。
スタートアップのためのストックオプション入門シリーズご案内
IPO準備企業向けにストックオプションの制度・税務・実務を体系的に解説しています。
1 ストックオプションとは?仕組みとスタートアップに有利な理由 →こちら
2 ストックオプションの種類と税金の違い →こちら
3 税制適格ストックオプションの9要件 →こちら
4税制適格SOの権利行使価額とセーフハーバー →こちら
5 有償ストックオプションとは →こちら
6 税制非適格ストックオプション→こちら
7 ストックオプション発行会社の会計・税務(リリース予定)
8 ストックオプション設計における権利行使条件・取得条項(リリース予定)
9 ストックオプション発行の実務プロセス(リリース予定)
10 ストックオプション発行の専門家と費用(リリース予定)
こちらもご覧ください。



