新規IPO企業のストックオプション活用状況 2026①TOブックス

新規IPO企業のストックオプション活用状況コラムをご覧頂きありがとうございます。

「ストックオプションプールは何%くらいが標準ですか?」
「役員と従業員の比率はどの程度が適当でしょうか?」
年間100件超のストックオプション評価、株価算定実績がある弊所によく寄せられるご質問です。

ストックオプション導入を決めた後も制度設計で悩まれる経営者・CFOは非常に多いです。
ストックオプションは報酬制度の一環として検討すべきなので正解は各企業によって異なるというアドバイスを実施していますが、それでも他社動向が皆様気になるようです。

本コラムはそういった皆様に向けて新規IPO企業がストックオプションを導入しているか、どのように活用しているかを1社毎に検証します。

IPOに成功した企業の事例を知ることで、少しでも多くのスタートアップ企業のストックオプション導入のヒントになることを期待しております。

【ご注意願います】
本コラム上の数値は全て公開されている新規上場申請のための有価証券報告書の数値を使用しております。一部推定も含まれておりますので事実と相違している可能性もございますので宜しくお願い致します。

2026年1回は株式会社TOブックスです。上場おめでとうございます!

会社概要

上場申請書等に記載された会社概要は以下の通りです。

第1回新株予約権

コード500A
業種情報・通信業
市場東京証券取引所スタンダード市場
主幹事SMBC日興証券      
承認日2026/1/9
公開日2026/2/13
事業内容ライトノベル及びコミックを中心とした企画・編集及びアニメ、舞台、グッズ展開を担うコンテンツプロデュース事業
会社設立年月日2014年5月14日
監査法人太陽監査法人
初値3,595円
公開価格3,910円
時価総額(公開)13,633 百万円
時価総額(初値)12,535 百万円

上場市場が東京証券取引所スタンダード市場というのが目を引きます。

早期に利益を確保している企業なので安定成長期に入っているということなのかと推定されます。

2014年5月設立ですので設立後12期目での上場となります

ストックオプションを導入しているか

ストックオプションを導入しています

ストックオプションの比率(潜在株比率)は何%か

株式の総数に対する新株予約権による潜在株式の割合は13.04%です

通常10%程度と言われていますので少し高目の水準かと思われます

ストックオプションの発行回数、種類、内容

ストックオプション発行回数、種類

発行回数は1回です。

ストックオプションの種類は信託型ストックオプション(税制非適格ストックオプション)です。

信託型ストックオプションについては税制適格が認められる場合もありますが、当社発行分は税制非適格と推定されます。

ストックオプション発行内容

ストックオプションの内容についての開示資料は以下の通りです。

分かり易いように執筆者が加筆してあります。

第1回新株予約権

決議年月日臨時株主総会決議:2021年12月13日
付与対象者の区分及び人数(名)信託会社 1
新株予約権の数(個) 450,000個
新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株) 普通株式450,000
新株予約権の行使時の払込金額(円)654 円
新株予約権の行使期間 2021年12月15日~2036年12月14日
新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円) 発行価格    659.9 資本組入額  329.95 
新株予約権の行使の条件 ①上場条件:あり
 ②在籍条件:あり(除く任期満了、定年退職)
 ③相続人による行使:不可
 ④業績条件:あり
(2027/4期までに営業利益1,000百万円超:達成済)
 ⑤株価条件:あり
(654円を下回らない)
新株予約権の譲渡に関する事項 新株予約権の譲渡については、取締役会の承認を要するものとする。

またストックオプション発行時に設定された信託の内容については以下の通りです

名称新株予約権信託(時価発行新株予約権信託Ⓡ)
委託者代表取締役
受託者コタエル信託㈱
受益者受益者適格要件を満たす者(受益権確定事由の発生後一定の手続きを経て存在するに至ります。)
信託契約日2021年12月14日
信託の新株予約権450,000個
信託期間満了日受益者指定権が行使された日
信託の目的第1回新株予約権450,000個(提出日の前月末現在1個あたり1株相当)
受益者適格要件当社が別途定める交付ガイドラインに従い、当社の役職員等の中から受益者指定日ごとに受益者を指定します。
 交付ガイドラインでは、当社における役職ごとに新株予約権の交付数の上下限が設定されており、当社の役職員のうち一定の役職にある者を対象に、定期開催される評価委員会において、当社における役割、過去の貢献から推測される将来の貢献期待値などを総合的に勘案し、対象者ごとに個別に新株予約権の個数を決定することとされております。

権利行使価額について

654円となっております。

当社は第三者割当増資を実施していないため株価推移の把握が困難ですが、発行時の公正価値評価だと推定されます。

権利行使条件について

内容から判明した当社の権利行使条件は以下の通りです

①上場条件:あり

②在籍条件:あり(除く任期満了、定年退職)

③相続人による行使:不可

④業績条件:あり(2027/4期までに営業利益1,000百万円超:達成済)

⑤株価条件:あり(654円を下回らない)

業績条件、株価条件に付きましては発行時の有償ストックオプション評価額を下げるために付与されたと推定されます。

付与対象者別付与状況

階層別の付与数状況

取締役・監査役・従業員・外部協力者別の付与人数、個数、持ち株比率、一人当たりの個数、比率は以下の通りです。

 人数株数合計持株比率1名あたり株数1名当り持株比率
代表取締役000.00%00.00%
取締役6363,70010.54%60,6171.76%
監査役319,0000.55%6,3330.18%
従業員1958,3001.69%3,0680.09%
社外協力者59,0000.26%1,8000.05%
合計28450,00013.04%  

一人当たりでは取締役2%弱、監査役0.2%、従業員0.1%、外部協力者0.05%という結果となっています。

ばらつき状況

「どの程度のばらつきが望ましいのですか?」というご質問を良く頂戴します。

そこで取締役、従業員へ付与にはどの程度のばらつきがあるのかを確認しました。

取締役への付与ばらつき状況

取締役人数株数比率
最大値1250,0007.25%
中央値145,0001.30%
最小値22,7000.08%

従業員への付与ばらつき状況

従業員人数株数比率
最大値112,0000.35%
中央値61,5000.04%
最小値61,0000.03%

特に取締役は最大値と最小値が92倍乖離しています。
かなりドラスティックに差をつけている状況が分かります。

在職者に対する付与割合

「従業員全員にストックオプションを付与しなければいけないですか?」こちらも良くあるご質問です。

在職者のどの程度の比率に付与されているかを確認しました。

各在籍人数は上場申請書記載の人数を使用しております。

 人数総数付与割合
代表取締役010.00%
取締役66100.00%
監査役33100.00%
従業員1915212.50%

取締役・監査役には全員付与しているのに対して、従業員は12.5%と8人に1人しか付与していないことが分かります。

当社のストックオプションの特徴

それでは最後に整理します。

当社のストックオプション最大の特徴は信託型ストックオプションであるという点です。

信託型ストックオプションとは

信託型ストックオプションとは民事信託制度を活用した有償ストックオプションの一種です。

将来入社する従業員や役員にも、過去の低い株価(行使価額)で自社株を購入できる権利を付与する仕組みで、税制適格と同様の税務メリットが享受できるとされ2020年前後以降に多くのIPO準備企業で採用されました。

しかし2023年5月に国税庁が「信託型ストックオプションの利益は、譲渡所得ではなく給与所得として課税される」という見解を示したこと(その後発表されたQ&Aで一定の要件充足により譲渡所得とされるとされました)、およびセーフハーバールール導入によりメリットがなくなったことで、現在では新規導入する企業は大幅に減少しています。

仕組みとしてはまず委託者(当社の場合は代表取締役)が自ら資金を拠出して有償ストックオプションを一括して取得した上で、信託に委託します。

委託されたストックオプションは会社が定めたルール(受益者適格要件)に基づき受益者を決定し受託者に通知します。
通知を受けた受託者が決定された受益者(付与対象者)に無償でストックオプションを譲渡します。

この結果、最初に発行を決定した時点の株価を行使価額とするストックオプションを取締役・従業員等は無償で取得できる仕組みとなっています。

当社の導入状況

当社が信託型ストックオプションを導入したのは2021年12月と上記国税庁の見解前でした。

しかし当初から権利行使期間を15年に設定していること、ストックオプションを付与対象者に譲渡しているのが2023年12月以降であること等から、当初より税制非適格ストックオプションという想定でストックオプション制度を導入していたように推測されます。

いすれにせよ最近ではかなり珍しくなった信託型ストックオプションの利用が当社の最大の特徴かと思われます。

最後に

以上、新規IPO企業のストックオプション活用状況2026①でした。

第2回はイノバセル【504A】の予定です。

どうぞお楽しみに!

非上場企業のストックオプション設計は専門家への相談が重要

ストックオプションは、発行して終わりではなく、
設計段階での判断がその後の会計・税務・上場準備に大きな影響を与える制度です。

特に報酬制度としてのストックオプション位置付けは効果発現の成否を左右する重要な判断となります。
経験豊富な専門家に相談されることをお勧めします。

Gemstone石割公認会計士事務所が選ばれる理由

・非上場株式株価算定、スタートアップ向けストックオプション評価・設計支援の専門事務所

・累計1000件超、年間100件超の株価算定、ストックオプション評価実績

・2014年以降累計30件超の新規IPOに関与

・豊富な監査法人監査・上場審査対応経験

30分無料相談を実施しております

ご相談内容に応じて、次のような点を整理します

  • 貴社の状況で、税制適格ストックオプションが利用可能かの整理
  • 税制適格SOが使えない場合の、有償SO・税制非適格SOの選択肢比較
  • 有償ストックオプションの評価額(公正価値)の考え方と実務上の留意点
  • 権利行使価額設定のための株価算定
  • 現時点で取るべき次の実務ステップの整理

制度設計に着手する前のご相談をおすすめします。

この記事を書いた人

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

長谷川好彦(公認会計士・社会保険労務士)

非上場株式株価算定、ストックオプション評価・設計支援を専門とする公認会計士・社会保険労務士
公認会計士(日本公認会計士協会東京会 正会員)
社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)

大学卒業後メガバンク勤務を経て、Gemstoneグループに入社。
株価算定およびストックオプション評価業務を中心に担当し、2025年には年間138件の算定・評価業務を担当。